令和6年6月定例会(第3号) 本文 2024-06-19


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◯三十七番(黒田太郎君)
 あいち民主の黒田太郎でございます。私からは大きく三点質問をさせていただきます。
 初めに、産業空洞化対策減税基金の展望についてお伺いいたします。
 四月の報道によると、国は無駄遣いの温床との批判がある基金の見直しに関する報告書をまとめたとのことです。具体的には、百五十二基金に基づく全二百事業を点検した結果、二〇二四年度までの二年間で十五事業を廃止することにし、残る百八十五事業も精査し、同じ期間の国庫返納額が五千四百億円超に上る見通しになったとのことです。国庫に返納するのは使用する見込みがないと見られる積立金で、二三年度分が四千三百四十二億円、二四年度分が一千百二十四億円とされています。国は報告書に、全ての事業に原則十年以内の終了予定時期を設定し、数値目標を設けて成果を検証すると明記。予算を基金に積む場合も三年分程度とし、目標達成状況を踏まえて、予算を追加する、検討する方針を打ち出したとのことでした。  基金の役割の一つに、財政支出の平準化があると考えられます。何年かに一度大きな支出が見込まれる事業については、複数年にわたって財政支出を行い、基金に積み立て、これを大きな支出が必要となる年度に取り崩すことで、単年度の財政支出の山をならすことができるわけです。しかし、今般の国の見直しにより、例えば経済産業省の次世代自動車充電インフラ整備促進事業や農林水産省の地域還元型再生可能エネルギーモデル早期確立事業については、事業が事実上終了し、管理費のみの支出となっていたようであり、こうした事業が廃止となり、該当する基金が国庫に返納されることになったようです。
 こうした国の動きを知り、私は個人的に反省するところがありました。すなわち、各議会で予算の審議を行い、単年度の財政支出を確認してはいるものの、長期にわたる事業がどのような動きをしており、どのような成果を出しているのかという、複数年度にわたる見方が不足していたということです。
 こうした反省に基づき、愛知県の基金を見てみると、全体では二十九の基金が存在しており、内訳は、財政調整基金、減債基金のほか、その他特定目的基金が十七、法定または国の施策による基金が九、定額基金が一となっています。本来であれば、こうした基金を一つ一つ長期的な視野で精査すべきところかと思いますが、この議場では産業空洞化対策減税基金を取り上げて議論を進めさせていただきます。
 では、なぜこの基金一つを取り上げるのか、その理由から説明させていただきます。それは、産業空洞化対策という名称が昨今の経済情勢に合っていないと感じたからであり、実際に経済情勢に合っていないのであれば見直しの必要が生じる可能性があると考えたからです。
 そもそも産業の空洞化が言われ始めたのは、一九八〇年代後半です。一九八五年のプラザ合意以降の急速な円高の進展や、アジア諸国の人件費が安価であったこと等を背景に、我が国の製造業の生産拠点が急速に海外に移転しました。このため、国内の雇用が減少し、技術水準が低下するのではないかといったおそれから、産業の空洞化問題が取り上げられたのです。その後も円・ドル相場は波を打ちながらも円高方向に進み、二〇一一年十月三十一日には、一ドル七十五円三十銭台に達したことで、その当時はまさに日本国内で製造業が成り立つのかどうかという深刻な危機であったと考えられます。こうした状況を受けて、愛知県では産業空洞化対策減税基金条例を制定し、これを二〇一二年四月一日に施行させており、この迅速、的確な対応は大いに評価されるべきものであると考えます。
 しかし、それから十二年の歳月が過ぎています。本年六月十八日には、一ドル百五十八円程度と、対ドルの円相場は、二〇一一年十月三十一日の高値に比べると約半値まで円安が進んでいることになります。また、人件費についても、為替相場のように数値では表しにくいものの、アジア諸国では近年の経済成長に伴って上昇していると言われています。こうして見ると、為替や人件費といった要因による産業空洞化の危機はかなり遠のいているのではないでしょうか。
 このような話の展開にしてしまいますと、私がこの産業空洞化対策減税基金の不要論を唱えようとしているように聞こえてしまうかもしれませんが、決してそうではありません。国内、特に愛知県内へ投資を呼び込む努力を我々は常に続けるべきと考えます。このことが、雇用を生み、産業の基盤をより重厚なものとし、これがさらなる投資を呼び込むという好循環につながることが期待できるからです。また、今後の愛知県の成長のためにも、研究開発や実証実験は積極的に後押しすべきです。
 ただし、今般、国が基金見直しを行ったのは、一度設立されると継続されがちであるという基金の特性にメスを入れるためであったのではないでしょうか。そして、基金を評価する上で大切なのが長期的視野であると考えられるため、この産業空洞化対策減税基金の設立以降十二年間の成果を確認した上で、今後の展望を伺うというのがこの質問の本意であります。
 そこでお尋ねします。
 基金設立後十二年間の成果を、企業立地、設備投資への支援、研究開発、実証実験への支援別に具体的にお聞かせください。また、産業空洞化対策として初めて以降、本県社会経済を取り巻く現状と課題をどのように認識し、それに対して産業空洞化対策減税基金を今後どう活用していくのか、お聞かせください。
 二つ目の質問に進みます。
 投資に関する消費者トラブルの未然防止についてお伺いします。
 昨年十一月のことです。知人──以下、Aさんと呼びます──からある相談事が寄せられました。概要は次のようなものでした。  Aさんは信頼できる知り合いの方から投資のお誘いを受けた。投資にはリスクがあることは分かっているが、その知り合いの方が信頼できる人であったことと、その知り合い自身も投資である程度もうけを出しているということで、Aさんも投資を決断した。投資をしてみると、日々利益が出ていることをネット画面で確認することができた。これに安心し、投資額を増加させた。しかし、しばらくすると、この資金運用している業者が金融庁に対する登録をしていない業者だといううわさが耳に入った。これはまずいと思い、投資した資金を返還してほしいと業者に依頼した。業者は当初これに応じ、月に少額を返還し、三か月返還したところで連絡が取れなくなった。間に入っていた知人に聞いてもどうなっているか訳が分からず、その知人もむしろ被害者となった。これはまずいということで、金融庁の相談窓口に電話をしましたが、投資は自己責任、登録業者であるかどうかの確認をしないで投資をするほうが悪いとして取り合ってもらえなかった。警察の♯九一一〇にも電話をしてみた。大変応対が丁寧でその点には救われたが、警察はこの場合、詐欺の認定ができずに動けないとのことだった。なぜなら、日々利益が出ていたことになっているし、少額とはいえ返還に応じているため、業者が元からだますつもりでお金を取ったという立証が極めて困難とのことだった。結果として、Aさんには打つ手がなく、黒田への相談に至ったが、何かを取り戻したいということより、こういうことが起きているということを県議として知っておいてほしいという気持ちがAさんには強かった。
 概要は以上のとおりですが、各種報道などから補足をしますと、この業者とは、本年二月に最高経営責任者ら四人が逮捕、起訴されたスカイプレミアム社のことです。投資対象は、外国為替証拠金取引、いわゆるFX取引であり、これを金融庁への登録なく行った金融商品取引法違反が容疑となっています。五月三十日には福岡地裁にて初公判が行われ、検察は冒頭陳述で、四人はおよそ五百七十人のエージェントと呼ばれる勧誘員たち、Aさんが信用した知り合いもこのエージェントに当たるわけですが、この勧誘員に客と投資の契約を結ばせていたと指摘しました。その上で、およそ二万二千人の会員から一千二百億円余りを集め、最高経営責任者以外の幹部ら三人は月平均二千万円以上、一人総額五億円から十億円の報酬を受け取っていたと主張しました。四人はいずれも起訴内容を認めた模様です。
 さて、首謀者が逮捕され、裁判が進んでいるならよいではないかと思われるかもしれませんが、そうではない、根の深い問題があると感じたので、私はこの問題を取り上げることにしました。
 Aさんとの面談で印象的だったことが三つあります。
 一つ目は、老後安心して暮らせるだけの資金がないという不安感です。二〇一九年に行われた金融庁の金融審議会、市場制度ワーキング・グループの報告書で、老後の三十年間で約二千万円が不足すると発表されて話題になった、老後二千万円問題は、引退世代だけではなく、引退に向けて準備を進める世代にとっても衝撃だったはずで、Aさんに限らず焦っている方が多いのではないでしょうか。ちなみに、Aさんは私と同世代、五十代後半の方です。
 二つ目は、ならば、資金を運用して増やそうにも、この低金利では銀行預金で運用したとしても大きな運用成果は得られないということです。三月には日銀がマイナス金利政策を解除したとはいえ、こうした状況に大きな変化があったとは考えにくいです。
 そして、三つ目は、こういう状況なので、ある程度のリスクを承知の上でリターンを求めていくしかないのですが、今でこそ学校教育の中に投資教育が盛り込まれるようになりましたが、それもまだ始まったばかり。ほとんどの世代の日本人は投資に関する教育を受けていないという問題があるのではないでしょうか。
 また、この問題は、スカイプレミアム社とその被害者に限った問題ではなく、今申し上げました三つの要素を背景に、かなり広がりのある問題なのではないかと感じる出来事がありました。
 Aさんは、こうした問題があるということをなるべく多くの人に知っていただくことで、自分のようなつらい目に遭う人が減るならばと、私との対談ユーチューブ動画を作成することに同意してくださいました。私がこの動画を公開したところ、恥ずかしながら、私のユーチューブ動画の再生回数は通常数十回程度、百回を超えると今回は多いなというふうに感じているものが、この対談動画は一万四千回を超える再生回数となったのです。それだけこうした問題に関する世間の関心が高いことを物語っているのではないでしょうか。
 また、こうして再生された結果として、動画を見ました、実はAさんと似た被害に遭いましたということで、私を訪ねてくださった方が三人おられたのです。これらの皆様は、スカイプレミアム社とは別の先から同種の手口で投資を誘われ、被害に遭ってしまったというのです。
 こうした投資被害の問題に実際にどのくらいの広がりがあるのかは分かりません。しかし、大切なのは、投資というものに対する正確な知識を多くの方に持っていただくことだと思います。そのことで、ある程度こうした被害を減らしていくことは可能です。そして、それは学校教育で行うのももちろんですが、学校で投資について習わなかった幅広い世代に啓発していくことこそが喫緊の課題なのではないでしょうか。
 そこでお伺いします。
 投資に関する消費者トラブルについて、未然防止に向けた啓発が必要と考えられますが、県として啓発をどのように行っているか伺います。
 三つ目に進めます。
 県庁本庁舎の魅力発信についてお伺いします。
 私は、お互いの時間調整がつき、議場の都合が許すときには、知り合いを本会議場に御案内しています。一番人気はあの鐘でしょうか。愛知県議会はもともと名古屋別院で始まったことをお伝えし、その名残で今でも会議開始や終了の合図として鐘を鳴らしている、これは愛知県議会の誕生にまつわるもので、愛知県議会はこうした歴史を大切にしているという説明をしますと、案外受けます。そして、実際に鐘をついていただくのです。軽く触れる程度でもそこそこの音が出ます。いつも鐘をたたいてくださる職員の方はさぞかし大変だろうと想像します。いつもありがとうございます。そして、初代の鐘は議会PRコーナーに飾られています。こちらは既に金属の劣化で音が出なくなっており、この対比をすることで愛知県議会の長い歴史を体感することができると思います。
 こんな議場見学に地元の学習塾の先生が興味を持たれ、夏休み期間を利用して議場見学を行ったことがあります。来てくださったのは、その先生と小学生、中学生、高校生の生徒さんたち十名程度でした。そして、しばらくしてその先生から面白い話を聞いたのです。夏休みに議場見学に行った生徒さんたちは、その後、社会科の点数が上がったと先生は喜んで伝えてくださったのです。
 議場見学と社会科の点数に正の相関関係があるのかと正面から詰められると私も答えに窮しますが、恐らく彼らは議場に来たことで政治や社会に親しみが湧いたのではないでしょうか。そのことで、テレビから流れてくるニュースや教科書に書いてあることの感じ方が変わったのではないでしょうか。私たちも同じような経験をすることがあると思います。これまで無縁であった事柄を体験することで、そのことに対する親しみが湧き、そのことに対する見方が変わってくるということは大いにあり得るのではないでしょうか。
 こうした点で愛知県庁を見てみますと、県庁本庁舎も歴史と魅力、そして可能性のある建造物ではないかと気づかされます。
 現在、県庁本庁舎は大がかりな屋根修理工事が行われており、しばらくはその全貌を見ることができません。時の流れを感じさせる緑青色の銅板屋根は、二〇二五年度末までには、正面、南北の三方向ともに赤褐色の屋根へと新調される予定となっております。新たな屋根は徐々に酸化が進むことで色が変化していくということですが、我々になじみのある緑青色の屋根になるには三十年ほどかかるようですので、平均寿命から考えますと私が見られるかどうか微妙ではありますが、本庁舎の衣替えを楽しみにしているところです。
 また、今年度は各階のトイレ改修工事が開始され、本庁舎の地下一階にはコンビニがオープンする予定とのことです。その意匠を守りながらも、現代的な課題に対応することで、来庁者の皆さんや職員の皆さんにも喜ばれるリニューアルになるのではないかと期待しております。
 このように、様々な変化が予定される県庁本庁舎は、職員の皆さんが日々業務を行う県の事務庁舎であるとともに、国の重要文化財に指定されている建造物でもあります。
 さらに、県庁本庁舎は、昨年度放映されたTBS日曜劇場、ヴィヴァンのロケ地になっており、同じく重要文化財になっている名古屋市役所本庁舎と名古屋市市政資料館は、現在放映されているNHKの連続テレビ小説、虎に翼のロケ地となっております。放映後、ロケされた場所を見てみたいということで、県庁本庁舎の見学に来られた方もいたと伺っており、名古屋市役所でも訪れる方が増えているという報道を先日目にしたところです。県庁周辺の建物の露出が増えることで、この地域の盛り上がりにも一役買うことができているのではないかと思うところです。
 ここで、県庁本庁舎の歴史について少し振り返ってみたいと思います。
 現在の本庁舎は、一九三八年三月に完成しており、今年で築八十六年を迎える大ベテラン庁舎であります。一八七二年に愛知県が誕生してからの庁舎としては四代目、愛知県庁舎として建築された建物として見れば三代目の庁舎であり、一九三三年に県議会で決定された庁舎建設の予算総額は三百万円だったということです。県庁本庁舎の建築様式は、洋風建築の躯体の頂部に城郭風の屋根を載せた、日本趣味を基調とした近世式の建物であることが挙げられます。いわゆる帝冠様式と呼ばれるものですが、名古屋城と先に完成していた隣接の名古屋市役所本庁舎との調和にも配慮されたデザインとなっています。
 一九四五年の第二次世界大戦末期に起こった名古屋大空襲では、名古屋城を含め名古屋市を中心に多くの建物が焼失する中にあって、隣接の名古屋市役所とともに幸いにも焼失を免れ、また、昭和東南海地震や三河地震、伊勢湾台風など、県内に甚大な被害をもたらした幾度の自然災害にも耐え、今なお力強く創建当時の威容をそのままに残す、誇りある貴重な建物となっているのではないかと考えるところです。
 こうして長年大切に守り続けられてきた県庁本庁舎は、一九九八年七月に国の登録有形文化財の指定を受け、さらに、二〇一四年十二月には名古屋市役所本庁舎とともに国の重要文化財に指定されました。重要文化財のうち、官公庁舎として区分されているものは県庁本庁舎を含めて全国で三十四件しかありませんが、そのうち現在も現役の事務庁舎として使用されているのは、愛知県庁舎と名古屋市庁舎を除くと、京都府庁旧本館、神奈川県庁舎、香川県庁舎旧本館及び東館の三例しかなく、希少性も極めて高いものと考えられます。
 申し上げるまでもなく、県の庁舎は県の財産であります。となれば、これは県民の皆様共有の財産であり、共有の財産が国に認められた重要文化財として指定されているということであります。こうしたことから考えますと、県庁本庁舎の魅力を県民の皆さんに知っていただくことは非常に意味のあることではないでしょうか。
 加えて、議場見学における私の実体験から申し上げれば、重要文化財である県庁本庁舎の魅力を県民の皆様に体感していただくことで、県民の皆様が愛知県政に親しみを感じ、愛知県庁ファンの増加につなげることもできるのではないでしょうか。ファンが増えるということは、様々な政策を進めやすくなることだと私は思うのです。
 そこでお伺いします。
 国の重要文化財である県庁本庁舎の魅力発信について、県はどのように考え、どのように取り組んでいるのか伺います。
 以上で私の壇上からの質問を終わらせていただきます。御清聴ありがとうございました。(拍手)

◯経済産業局長(矢野剛史君)
 産業空洞化対策減税基金における成果についてお答えをいたします。
 本県では、二〇一二年に条例により設置された産業空洞化対策減税基金に基づき、企業立地、研究開発等の補助金による企業立地の促進や研究開発の支援に取り組んでまいりました。
 まず、企業立地関連の補助金では、これまでに四百九十件の補助対象案件を採択し、総投資額約八千三百四十億円、約七万三千名の常用雇用者の維持、創出が見込まれるなど、自動車関連をはじめとする多くの県内企業の投資を支援してまいりました。このうち、県内自治体と連携して企業の再投資を支援する新あいち創造産業立地補助金Aタイプでは、三百六十一件が中小企業を対象としており、総投資額約二千七百七十七億円、約三万一千名の雇用維持が見込まれるなど、本県の製造業を下支えしている中小企業をしっかりと支援しております。
 次に、新あいち創造研究開発補助金では、昨年度までに九百五件を採択し、新製品、新技術の研究開発を支援しているというところでございます。支援企業は、採択後五年以内に商品化や試作品の完成を目標として研究開発に取り組んでおり、六割を超える採択案件で目標を達成しております。具体的な成果としては、弥富市にございます高雄工業株式会社が、金属3Dプリンターを活用した一体造形により誘導加熱コイルを製品化することで長寿命化や納期短縮を実現し、昨年度、全国コンテストで大賞を受賞するなど、新事業として事業規模を拡大しております。
 今後とも引き続き、さらなる成果の創出に向けて、着実に支援の取組を進めてまいります。
 次に、本県社会経済の現状認識を踏まえた産業空洞化対策減税基金の今後の活用についてお答えをいたします。
 本基金が設置をされました二〇一二年当時は、議員から御指摘がございましたとおり、急速に進行する円高やアジア諸国の低コストの労働力等を背景に、県内企業拠点の海外移転が進む産業空洞化への対応が喫緊の課題でありました。
 その後十二年が経過し、近年においては、為替の円安基調、アジア諸国の持続的な経済成長といった動向に加え、大規模感染症や世界各地での紛争等により、生産基盤となるサプライチェーンの分断リスクの増大など、新たな課題が浮上してきております。
 このような不確実性が高まる社会経済環境の中にあっても、製造業が持続可能な成長を遂げるためには、イノベーションの創出や産業競争力の高度化、そして変化に強い企業体質の構築が不可欠であります。こうした諸課題を克服しつつ、本県の産業競争力を維持、高度化するため、本基金及び補助制度を有効に活用していくということが重要と考えております。
 これまでの社会経済環境の変化に伴い、本基金に基づく補助制度において支援メニューを拡充するなど、柔軟に対応したところでありますけれども、今後とも、新たな動向を踏まえ、本基金及び補助事業の在り方についても検討を加えながら、より一層、企業立地、設備投資の促進と先進的な技術開発の支援に取り組んでまいります。
 引き続き、産業首都あいちを目指し、新たな事業展開に挑戦する企業を積極的に応援することにより、本県産業のさらなる集積拡大と競争力強化を図ってまいります。

◯県民文化局長(森岡士郎君)
 投資に関する消費者トラブルの未然防止についてお答えします。
 県及び市町村に寄せられた消費生活相談件数のうち、投資に関する相談は、二〇二二年度は五百二十一件でありましたが、二〇二三年度は八百二十六件で、前年度と比べて三百五件、五八・五%増加しており、投資に関する消費者トラブルの未然防止は、県民の安全・安心な暮らしの実現に向けて重要な取組であると認識しております。
 そこで、本県では、県及び市町村に寄せられた消費生活相談の中から、その時々の特徴的な事例や具体的な対処方法について周知する、消費者トラブル情報、あいちクリオ通信において、昨年度は七月と九月の二回、投資に関するトラブルを取り上げ、広く注意喚起を行ったところであります。
 また、最近では、SNSで著名人をかたって信用させ、あるいは、あたかも著名人が推奨しているかのように見せかけ、投資と称して多額のお金を振り込ませる詐欺的な手口に関する相談が多く寄せられていることから、本年五月のあいちクリオ通信においてその内容を取り上げ、注意喚起を行ったところであります。
 さらに、本年八月に発行する消費生活情報、あいち暮らしっく、高齢者の消費者被害未然防止特集号においても、投資に関する消費者トラブルを取り上げる予定としております。
 こうした取組以外にも、消費生活情報ウェブサイトあいち暮らしWEBやSNSによる情報発信を行うなど、様々な機会を捉えて広く啓発を行うとともに、不安や疑問に思った場合やトラブルに遭った場合はすぐに御相談いただくため、消費者ホットライン一八八番(いやや!)を広く周知し、活用を促しております。
 今後とも、こうした取組を着実に実施していくことで、投資に関する消費者トラブルをはじめ、様々な消費者トラブルの未然防止に向けた啓発にしっかり取り組んでまいります。

◯総務局長(纐纈知行君)
 県庁本庁舎の魅力発信についてお答えいたします。
 県庁本庁舎は、三層構成の外観や城郭風屋根といった意匠の優秀性と歴史的価値の高さから、二〇一四年に国の重要文化財に指定されたものであり、大きな文化的価値を有する建築物として、県民の皆様にその魅力を広く知っていただき、身近に感じていただくことが重要であると考えております。
 そこで、一年を通して開庁日に県庁見学を実施するとともに、毎年十一月三日の文化の日に本庁舎公開イベントを開催しております。
 県庁見学では、あらかじめお申し込みいただいた学校や団体などの皆様に、竣工当時の面影が色濃く残る正面玄関や正庁、講堂などを御覧いただき、重要文化財に指定された本庁舎の魅力や歴史などについて説明しております。
 また、本庁舎公開イベントでは、ふだんは公開していない知事室や貴賓室を公開するほか、講堂におけるコンサートや、観光、スポーツなどの県事業にちなんだステージイベント、パネル展示などを行い、来場者の皆様に楽しんでいただきながら、県の施策のPRにも努めているところでございます。
 本庁舎公開イベントを開始した二〇一一年度から昨年度まで、コロナ禍での中止を除く十一年間で、延べ約五万三千人もの方にお越しいただいており、多くの方に県庁本庁舎の魅力を感じていただけたものと考えております。
 今後は、現在行っております本庁舎の屋根工事も順次完了し、外観に新しさも加わってまいりますことから、本庁舎公開イベントの実施内容にさらに工夫を凝らし、より多くの県民の皆様に県庁本庁舎の魅力を知っていただき、身近に感じていただけるよう取り組んでまいります。

◯知事(大村秀章君)
 黒田太郎議員の質問のうち、産業空洞化対策減税基金の展望につきまして、私からもお答えをいたします。
 本基金は、企業の立地促進や研究開発の支援を通じて、県内の投資拡大や雇用創出、革新的な製品開発を促進することで、産業のスケールアップを図り、本県の経済成長に大きく貢献をしてまいりました。実績等は先ほど局長のほうから答弁をしたとおりでございます。
 一方で、本県産業が直面する課題は、IoTや生成AIの出現を伴ったデジタル化の加速度的な進展、SDGsの社会的要請やカーボンニュートラル等への対応といった新たな課題へと変化しております。
 こうした中で、大きく変化する時代の潮流に的確に対応しつつ、本県が我が国を牽引する成長エンジンであり続けるため、本基金のこれまでの成果と課題をしっかりと検証しながら、名称の在り方を含め内容の見直しを行ってまいります。
 引き続き、本県が日本の発展を強力にリードするため、本基金を効果的に活用し、産業首都あいちの実現に向けた取組を推進してまいります。

◯三十七番(黒田太郎君)
 知事はじめ御答弁、誠にありがとうございました。
 それでは、投資被害について一点要望をさせていただきます。
 まず、このような事案が詐欺として認定し難いのは、先ほど申し上げましたとおりです。運用していた形跡を残すことや多少なりとも返金に応じることで、頑張ってはみたけど運用がうまくいかなかった、だますつもりはなかったということにされてしまうからです。
 では、今回のスカイプレミアム社は金融商品取引法違反で検挙されましたが、調べましたところ、この立件も簡単ではないようです。
 金融商品取引法における無登録営業の禁止で立件する場合、まず大前提として、業として行っていることを明らかにせねばなりません。業としてとは、一般に不特定多数の者を相手に取引をする行為で、反復継続性を持って行うものと解されているようであり、単に一回の行為のみでは成立しないようです。つまり、立件するためには幾つかの条件があり、これらを満たすまで捜査するには時間がかかるということです。
 また、運用すると言っておきながら実際には全く運用しなかった場合は、そもそも無登録営業には該当せず、この場合は金融商品取引法違反での立件は難しいようなのです。
 さらに、証券取引等監視委員会のホームページを見てみると、「無登録業者には、金融庁の監督権限が及ばず、投資者保護規定に基づく処分等が行えませんので、ご注意ください」と明記されています。
 つまり、今から申し上げることは単なる私の想像にすぎませんが、こうした業者は詐欺での立件を回避し、金融商品取引法違反での立件も回避し、行政の手の届かないところに身を置いた上で、人様からお金を集めているのではないでしょうか。
 こうしたことが起きているということをぜひとも議会及び行政の皆様と共有したいがために、私は本件を取り上げさせていただきました。国とも協議をする必要がある事案ですが、何とかしてこのような業者の横行を防ぐ施策を講じていただくことを要望します。
 また、被害に遭った方が一番に望むのは資金の回収です。資金を回収しようと思えば早い段階で運用実態を解明する必要がありますが、現在の法制度では、警察も金融庁も業者に対して強制力を持って運用状況の開示を求めることは難しいようです。
 投資は自己責任とはいえ、違法行為の認定に時間がかかり、逮捕された頃には資金はどこかへ行ってしまっているということでは、被害者は浮かばれません。何とかして早期に運用実態を解明できる仕組みづくりを国とも協議しながら行っていただくことを強く要望し、発言を終わります。

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