令和5年一般会計・特別会計決算特別委員会 本文 2023-11-15(その1)

【黒田太郎委員】
 令和4年度決算に関する報告書184ページの中小企業金融対策費について伺う。
 2020年5月から2021年3月まで実施した新型コロナウイルス感染症対応資金、いわゆるゼロゼロ融資の実績について、直近の実績と業種別の返済状況はどのようになっているのか。

【中小企業金融課担当課長(金融)】
 ゼロゼロ融資実績だが、最初の実績が、件数が8万7,000件余、金額が1兆4,680億円で、多くの利用があった。これの9月末時点での残高が、件数が6万1,000件、金額が7,810億円であり、当初の実績に比べて、件数が2万6,000件、金額が6,870億円減少している。これを率にすると、件数が約30パーセント、金額が約47パーセントの減少になっており、件数に比べて金額の減少幅が大きいことから、取扱いが終了してからの2年半で、比較的大口の利用者の返済や借換えによって減少したと考えられる。
 また、業種別の減少率を見ると、製造業は件数が約35パーセント、金額が約50パーセントに対し、非製造業については、件数が約29パーセント、金額が約46パーセントとあまり大差はないものの、製造業に比べて非製造業の方が、件数、金額とも減少幅が小さくなっている。
 非製造業の中でも不動産業は、ほかの業種が件数で26パーセントから34パーセント前後、金額が40パーセントから49パーセント前後の減少率なのに対して、件数は23パーセント、金額が37パーセントと、件数及び金額とも減少幅が小さく、ほかの業種に比べて返済や借換え等があまり進んでいない可能性がある。
 また、昨今、倒産が増えている飲食業やサービス業は、件数の減少率が約27パーセントと減少幅が小さいが、金額は約40パーセントから45パーセントの減少率となっており、おおむねほかの業種と同じ傾向である。

【黒田太郎委員】
 コロナ禍で中小企業の事業継続のための資金繰り支援として実施してきたゼロゼロ融資について、その効果を県としてどのように評価しているのか。

【中小企業金融課担当課長(金融)】
 実績は、答弁したとおり件数が8万7,000件余、金額が1兆4,000億円であり、コロナ前の実績に比べると、件数で約4倍強、金額が約7倍強で県の制度融資創設以来、最大規模の実績となり、業種についても、コロナの影響を受けた幅広い事業者に利用してもらった。
 また、新型コロナウイルス感染症の影響によって経営環境が急激に悪化する中で、中小企業が事業継続のために必要とする資金を迅速かつ円滑に供給し、県内の資金調達環境の維持に大きく貢献した。
 また、ゼロゼロ融資の創設をきっかけに初めて県の制度融資を利用した事業者が増えたことから、手元資金を念のため厚くして経営の安定を図ろうとした事業者の資金需要にも応えられた。実際、利用者からは、実質無利子、無保証料のゼロゼロ融資を利用することで倒産を回避できたという声も多く寄せられるなど、倒産の抑制により雇用の維持にも効果があり、経済の非常時における県制度融資の施策効果が適切に発揮されたと考えている。
 しかし、政府系金融機関が実施したゼロゼロ融資が不良債権化している問題や収益が改善する見込みがない中小企業が過剰債務に陥っているのなど報道もあり、コロナ禍を乗り越えたものの、物価高等の影響によって依然として厳しい状況にある中小企業者に対して、引き続き借換え支援の継続などの資金繰り支援が必要と考えている。

【黒田太郎委員】
 ゼロゼロ融資の据置期間が終了し、今年度から返済が本格化する中小企業者が増える中で、県としてどのような対応を考えているのか。

【中小企業金融課担当課長(金融)】
 本県では、ゼロゼロ融資の返済に不安を抱える中小企業者の声を受けて、昨年10月に独自のサポート資金新型コロナ借換を創設した。さらに、既存のサポート資金経営改善等支援の融資限度額を1億円に引き上げるとともに、売上高の減少要件を従来15パーセント以上だったものを5パーセント以上に緩和し、売上高に加えて利益率の減少を融資対象に追加、さらに、借換えの特例を設けるなどの見直しを行った。サポート資金経営改善等支援は、本年4月以降も継続して、名前をサポート資金伴走支援として引き続き実施をしている。これらゼロゼロ融資の借換えに対応する二つの制度は、いずれも据置期間が5年以内で、特に、県独自の新型コロナ借換は最長15年間の融資期間に対応しており、借換えによって月々の返済負担が軽減されるほか、据え置く期間の再設定によって経営の改善や今後の事業の方向性を検討する時間的な余裕が生ずるといったメリットも見込まれる。
 なお、これらの制度の融資実績は、令和4年度が合わせて6,373件、金額が1,208億円、県の制度融資全体に対する構成比は45パーセントとなっている。
 令和5年度は、9月末時点で6,674件、金額が1,343億円で、県制度融資全体に対する構成比が約68パーセントであり、今年度のゼロゼロ融資の返済開始時期の到来に合わせて利用が大きく伸びている状況である。
 このほか、県制度融資の取扱い金融機関及び県信用保証協会に対して、これらの制度の周知とともに、夏季や年末、年度末といった資金需要期に合わせて各事業者の実情に応じて借換えや条件変更等の相談に柔軟かつ積極的に対応してもらうよう定期的に要請を行っている。
 本県としては、今後も経済環境の動向等を注視しつつ、こうした取組を通じて、物価高などの影響によって依然として厳しい状況にある中小企業者の資金繰りをしっかりと支援していく。

【黒田太郎委員】
 コロナ禍で大変だった時期に、このゼロゼロ融資で本当に救われたという企業がたくさんいたと思う。その意味では、しっかり対応してもらったことは、非常にすばらしいことである。さらに、返済が本格化している中でもきちんと対応している、これも高い評価に値する。
 その一方で、金融はどうしても後方支援や潤滑油の役割であり、中小企業を本質的に元気にしようと思ったら、やはり成長戦略が必要となってくる。成長戦略について、経済産業局全体としてさらに推し進めてもらいたい。

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