

令和5年6月定例会(第3号) 本文 2023-06-22
◯三十七番(黒田太郎君)
あいち民主の黒田太郎です。私からは大きく四つ質問をさせていただきます。
まず初めに、外部組織への職員派遣についてです。
現在、世の中はグローバル化やデジタル化が加速度的に進展するとともに、カーボンニュートラルの実現に向けた変革の動き、大規模災害や感染症などのリスクの増大、人口減少、少子・高齢化の加速など、社会情勢が目まぐるしく変化しています。また、この五月には、新型コロナウイルス感染症が五類感染症に移行し、日本もウイズコロナからアフターコロナに転換しつつあり、社会経済活動を正常化していくことが愛知のみならず、日本全体の大きな課題であります。
このように、先を見通すことが難しい社会情勢の中、DXの推進による行政運営の効率化や生産性の向上、脱炭素社会への転換、防災・減災対策の推進、人口減少、少子・高齢化への対策、持続可能な地域社会の実現など、行政が取り組むべき課題は山積されており、迅速に対応していかなければなりません。
また、愛知県においては、ジブリパークの第二期開園、STATION Ai、愛知国際アリーナ、アジア・アジアパラ競技大会、リニア中央新幹線開業、中部国際空港第二滑走路の供用開始など、様々なビッグプロジェクトも進行しています。複雑・高度化していく政策課題に対応するとともに、様々なプロジェクトを円滑に遂行、成功させていくために何より大事なのは、職員の人材育成であります。
県では、二〇二〇年十二月に愛知県人材育成基本方針を策定し、目指す職員像として、一、自律的で、スピーディーかつスマートに行動する職員、二、行政のプロ意識と高い専門能力を持って行動する職員、三、サスティナブルな県庁を目指し、組織一体となって、いきいきと活躍する職員を掲げ、様々な人材育成に取り組んでいます。中でも、特に私が有意義だと考えるのは、外部組織への職員派遣です。
社会の急激な変化に対応し、グローバル化、デジタル化していく社会で県民ニーズに応えていくためには、県職員一人一人が担当業務にとどまらない幅広い視点を持ちながら、創造力と行動力を発揮していかなければなりません。県庁内部での業務を通じて研さんを積むことはもちろん、外部組織の知恵やノウハウを習得しながら職員個々の能力を高めていくことが大切です。そのような職員を育成するには、中長期的な視野に立って、積極的に外部組織に職員を派遣していくことも重要な取組の一つだと感じます。
例えば、国への派遣です。国に職員を派遣することで、国の予算編成や国会への対応、政策立案や法令整備、全国の自治体や各種団体との調整など、県庁では経験できない公務に従事することができます。また、国職員の仕事ぶりを間近で見ることは、県職員にとってもよい刺激になり、関係省庁で築いた人脈も今後の大きな財産になると思います。さらに、国の予算や法令改正の内容、県行政に関連する制度についての情報を迅速、正確に理解し、そこで得た知識を県の施策に反映することは非常に有益なことだと考えます。
そして、民間企業等への派遣です。愛知県には、製造業を中心に数多くの優良企業が存在しています。このような環境を有意義に活用するため、県内の様々な業種の企業に積極的に職員を派遣するべきだと考えます。民間企業の一員として、異なる価値観や文化を持つ方々と一緒に仕事をすることで、県庁を客観的に捉える機会になるとともに、職員の視野を広げ、柔軟性や発想力を養うことができると思います。また、企業独自のノウハウやコスト意識、仕事の進め方などを学ぶこともでき、そこで得た経験や知見を県行政に活用することで、より質の高い行政サービスを提供していくことが可能になると考えます。
国には、官民人事交流制度というものがあり、民間企業との交流人事を行っているそうです。行動原理が互いに異なる組織間での人事交流を通じて、相互理解の促進と双方における人材育成及び活用、組織運営の活性化などを図っているとのことです。愛知県においても、人材育成の取組の一つとして、国への派遣、民間企業との交流を推進しておられるとお聞きしています。ここまでお話ししてきたとおり、職員が外部組織の文化や風土、仕事の進め方を直接肌で感じながら、様々な経験を積むことは職員の能力向上や意識改革に非常に有益だと考えます。そして何より、愛知県に戻り外部組織に派遣された経験を生かし、県の仕事に生かしていくことが大切なことだと思います。
そこでお伺いいたします。
政策課題や県民ニーズの変化に迅速かつ的確に対応していくためには職員の人材育成が重要であり、国や民間企業などの外部組織への派遣が職員の能力向上や幅広い視野の醸成に有用であると考えますが、国や民間企業への職員派遣について、これまで県としてどのように取り組んできたのか。また、国や民間企業へ職員を派遣したことでどのような効果があり、今後どのように取り組んでいくのかについてお伺いいたします。
次に、本県スタートアップの海外展開支援についてです。
本県は、自動車産業を中心とするモノづくり企業の圧倒的な集積を生かし、スタートアップと有機的に結びつけることにより、独自のあいちスタートアップ・エコシステムの形成を目指しています。そして、その中核的な拠点となるSTATION Aiの開設が二〇二四年十月と、一年四か月後に迫っているところです。
先月、STATION Ai整備地の北側に隣接する鶴舞公園がリニューアルオープンされ、再整備された公園や新しい飲食店に多くの人がにぎわう様子が報道されました。一年四か月後には、これにSTATION Aiが加わり、さらに多くの人々が集う愛知県の新たな魅力的な空間になっていくことに思いをはせたところです。
しかしながら、世界的に見ると、我が国のスタートアップの現状はまだ黎明期にあると言わざるを得ません。スタートアップやテクノロジー企業、ベンチャーキャピタルに関する独自のデータベースを基にした有料情報サービスを運営しているアメリカのCBインサイツが、企業評価額十億ドル以上で創業十年未満の未上場のスタートアップを指すユニコーン企業を発表していますが、その最新版である二〇二三年四月七日付の状況を見ると、全世界のユニコーン企業の総数一千二百六社のうち、国籍別では、アメリカが半数を超える六百五十三社、続いて中国が百六十九社、インド七十社、イギリス四十九社、ドイツ二十九社となっている中、日本は僅か六社にとどまっている状況です。
この現状を打破するため、国は、昨年十一月にスタートアップ育成五か年計画を策定しました。この計画では、日本にスタートアップを生み育てるエコシステムを創出し、戦後に次ぐ第二の創業ブームを実現するために、スタートアップへの投資額を二〇二七年度には十兆円規模とすることを大きな目標に掲げ、将来的にはユニコーン企業を百社創出し、スタートアップを十万社創出することにより、我が国がアジア最大のスタートアップハブとして、世界有数のスタートアップの集積地になることを目指すとされています。こうした国の目標を達成するためには、日本最大のスタートアップ支援拠点であるSTATION Aiが先頭を切って牽引していく役割が求められていると考えます。一方で、日本のスタートアップが企業評価十億ドル、日本円にして約一千四百億円のユニコーン企業となるためには、日本国内だけでなくグローバルな市場展開が必須となると考えます。そのためには、日本国内での支援も必要だと思いますが、スタートアップや起業を志す方々が日頃から海外のスタートアップと切磋琢磨する環境を整備することや、海外を実際に訪問し経験を積む機会を提供するなど、海外への事業展開を見据えて行動するよう導いていくことが何よりも重要であります。 私は、昨年十二月の代表質問で、日本経済のみならず、世界経済の新しい流れをつくる企業がSTATION Aiから生まれることに対する期待を込めて、プレ・ステーションAiの取組状況とSTATION Aiへの成果の継承について質問させていただきました。その際、起業を志す若者たちが大きく成長、飛躍する場を提供する役割を現在のプレ・ステーションAiが果たしてほしいとも述べましたが、スタートアップの海外志向を高めるためには、プレ・ステーションAiに海外スタートアップを集め、日常的に海外スタートアップとの交流を図ることができるよう仕掛けていくことが必要ではないでしょうか。
また、海外でビジネスチャンスをつかむといっても、やみくもに海外に出かければいいというものではなく、やはり綿密な海外市場展開への戦略を立てた上で、信頼できる機関からの紹介など、少しでも成功確率を高めていくことが必要だと考えます。その点では、プレ・ステーションAiの統括マネジャーを中心とした支援の充実を期待するところです。それに加え、本県としては、知事が自ら率先してスタートアップ先進国を訪問され、各国の中心的なスタートアップ支援機関や大学と覚書等を締結し、現在、そのネットワークは、アメリカ、中国、シンガポール、フランス、イスラエルの五か国十四機関にまで拡大しています。また、先月のアメリカ渡航においても、スタートアップ支援の本県との連携機関であるテキサス大学オースティン校やヒューストンにあるスタートアップ支援機関を訪問され、協力関係の構築に向けた働きかけを行われたと伺っております。
そこで、このような機会で培ってきた本県の海外とのネットワークを最大限活用し、本県スタートアップの海外での挑戦の場と機会をつくり出していくことがSTATION Ai開業後も見据えた県の役割として重要ではないでしょうか。
そこでお伺いいたします。
これまで構築してきた海外のスタートアップ支援機関などとの連携を生かし、本県スタートアップの海外展開支援をどのように実施していくのか伺います。
次に、愛知県が開発した健康づくりを支援するアプリ、あいち健康プラスについてお伺いいたします。
健康支援アプリと聞いて、皆さんはどのようなアプリを想像されるでしょうか。例えば、毎日の血圧測定の結果を記録する、体重の変化を記録する、一日の歩数を記録するなどが思い浮かぶのではないでしょうか。あいち健康プラスは、こうした健康に関係する記録を登録し、御自身の健康管理に役立てていただくために愛知県が二〇二〇年度から運用しているアプリです。
私たちの生活において、健康が大切であるという点については、多くの方に理解していただけることだと思います。しかし、健康診断を受けて、体重測定や血液検査の結果などから、お医者さんにもっと運動したほうがよいですね、毎日ウオーキングに取り組んでみてはどうですかと言われたら、皆さんはどうされるでしょうか。分かってはいるけどなかなか難しい、あるいは取り組もうとしても毎日継続するのはと思われるのではないでしょうか。あいち健康プラスは、このようなときに毎日の健康づくりを助けてくれるものです。
私の知り合いにこのアプリを利用している方がいらっしゃいます。この方は、それまでの生活の中で運動不足を指摘され、実際に一日の歩数を調べてみたところ、五千歩にも届かない状況だったそうです。そこで、一日の目標を八千歩以上としてこのアプリを設定し使ってみたところ、毎日楽しくウオーキングに取り組むことができていると話してくれました。それを聞いて私もどんなアプリだろうと興味を持ち、いろいろと調べてみました。
先ほども申し上げましたが、毎日の忙しい生活の中に新しい運動習慣などを加えて、さらに続けていくということは非常に大変です。このアプリでは、一人でも健康づくりに取り組めますが、同じくアプリを利用している方と毎日の歩数を比べて、自分がどんな位置にいるか知ることができるランキング機能や、ふだんの生活で仲よくしている方々とグループ登録することで、グループ間のランキングが分かるなかよしグループ機能など、つながりを感じながら健康づくりができる点がよいところだと思いました。また、二〇二〇年一月以降、私たちの毎日の生活に大きな影響を及ぼした新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置づけが今年の五月八日に二類相当から五類へ移行しました。ちょうどこのアプリの配信を開始した頃が新型コロナウイルス感染症の感染防止対策の一つとして、行動制限により、外出の機会が減ったり、親しい人との交流機会が減ったりした時期に重なり、県民の皆様には健康づくりの機会を得にくいような状況もあったのではないかと思います。こうした中、今がこの三年余りの生活習慣を見直し、新たに健康づくりに取り組んでいただくタイミングとも言えます。
そこで、県民の健康の保持、増進を目指すあいち健康プラスの利用実績と課題及び今後の取組についてお伺いいたします。
結びに、県債による資金調達と減債基金の資金運用について伺います。
国の月例経済報告は、六月分がまさに本日夕方以降に公表される見込みでありますが、公表済みの五月の月例経済報告によりますと、景気は緩やかに回復している。先行きについては、雇用・所得環境が改善する下で、各種政策の効果もあって緩やかな回復が続くことが期待される。世界的な金融引締め等が続く中、海外景気の下振れが我が国の景気を下押しするリスクとなっている。また、物価上昇、金融資本市場の変動等の影響に十分注意する必要があるとされています。
金融資本市場の変動の影響に注意ということですが、昨年、二〇二二年は、金融資本市場が大きく動いた年でありました。二〇二二年二月のロシアのウクライナ侵攻により、世界的にエネルギー、食料価格の上昇が顕著となり、こうした物価上昇に対応するため、二〇二二年三月のアメリカを皮切りに各国中央銀行による利上げが行われました。日本銀行によるマイナス金利政策が継続される日本と諸外国との金利差が広がることとなり、急速に円安が進行、エネルギーや食料を輸入に頼る我が国の貿易収支は大幅に悪化するという流れになりました。
こうした経済の動きの中で、二〇二二年十二月に日本銀行が長短金利操作、いわゆるイールドカーブ・コントロールにおける長期金利の変動幅をプラスマイナス〇・二五%程度からプラスマイナス〇・五%程度に拡大し、我が国における長期金利も上昇していくこととなります。実際に、十年国債の利回りは、変動幅の拡大前後で〇・二八二%から〇・四三二%へと大きく上昇したところでありました。
国債の金利は、他の債券の金利の基準となるものであり、その変動は当然、地方公共団体の発行する地方債にも影響します。本県では、一般会計の二〇二三年度当初予算ベースで二千二百八十六億円という県債による多額の歳入を計上しております。県債は、ジブリパーク第二期オープンに向けた整備やSTATION Aiの建設をはじめ、本県が日本一元気な愛知としてますます発展していくために必要な事業を着実に進めていく上での貴重な財源であります。諸外国や日本銀行の金融政策により、金融資本市場の先行きが不透明な状況にあっても、安定的に県債を発行し、資金を調達していくことは、財政運営上非常に重要であると考えられるところです。
こうした中、本県では、総務局財政課の課内室であった財務資金室について、今年度から新たに資金企画課とし、資金調達や資金運用に関する体制を強化したものと承知しております。スピーディーな意思決定により変動する金融資本市場の中で効果的な起債運営が行われることを期待しております。
そこで伺います。
県債による安定的な資金調達に向けては、戦略的に取り組んでいかれる必要があるものと思いますが、県債の発行に際し、どのように取り組んでいかれるのか伺います。
次に、減債基金の資金運用について伺います。
さきに触れましたように、本県では、多くの県債を発行しておりますが、その県債の償還のための財源を蓄えておくことを怠ってはなりません。
例えば、住宅を購入した場合、高額な買物のため、長期の住宅ローンを組んで将来にわたって返済されることが多いと思いますが、返済方法は元金と利子の両方を毎月支払っていくことが一般的です。これとは異なり、県債の多くは、利子は定期的に支払っていきますが、元金は満期到来時に一括して償還を行う満期一括償還といわれる方法が取られており、満期到来時には元金返済のために多額の償還財源が必要となります。このため、本県では、県債の償還財源を確保するために減債基金を設け、毎年度その基金への積立てを行っているものと承知しております。積み立てた基金は県債の満期まで使われないため、長期の運用が可能な資金であると考えられます。もっと言えば、積み立てているだけではまさに宝の持ち腐れであり、しっかり資金運用を行うことが重要であります。当然のことでありますが、基金は大切な公金であります。リスクが高い運用方法を選択することはできないと思いますが、金利の上昇傾向が続いているとはいえ、まだまだ低金利の金融状況において賢く資金運用を行っていく必要があると考えます。
そこで、現在の減債基金の運用状況はどのようになっているか、また、今後の資金運用についてどのように取り組んでいかれるのか伺います。
以上で、壇上からの私の質問を終わらせていただきます。御清聴誠にありがとうございました。(拍手)
◯人事局長(権田裕徳君)
初めに、国や民間企業への職員派遣についてのこれまでの取組についてお答えします。
本県では、職員育成の取組として、県行政の枠を超えた幅広い視野や実践的な民間感覚などを身につけさせるため、毎年度国や民間企業への派遣を実施しております。
二〇二一年度からは、前年の十二月に策定しました愛知県人材育成基本方針に基づきまして、若手職員の育成を一層推進するため、デジタル関係などの新たな行政分野や業種への派遣を拡大しております。この結果、派遣者数は、基本方針策定前の二〇二〇年度と二〇二三年度を比較して、国への派遣者は二十六人から三十三人、民間企業への派遣者は九人から十三人と、いずれも増加してきております。
次に、派遣の効果と今後の取組についてお答えします。
まず、国への派遣につきましては、派遣者から、国会対応などで仕事に対するスピード感が養われた、国職員とのつながりができ、情報を入手しやすくなったといった声が寄せられており、高度な専門知識の習得や情報収集能力の向上などに寄与しているものと考えております。また、民間企業への派遣につきましては、復帰報告会におきまして、県庁勤務では学ぶことのできないスキルを身につけることができた、新鮮な気づきや学びが多く貴重な財産となったといった感想があり、県の内部では身につけることが難しい発想の習得や意識改革の促進につながっているものと認識しております。
さらに、若手職員の研修におきまして、派遣者による体験報告を行っており、受講者を対象としたアンケートの結果、九五・五%が自らの認識や行動を向上させる内容であったと回答しているほか、民間での働き方を経験することに興味が湧き、今後の選択肢の一つになったというコメントがあるなど、民間企業への派遣が若手職員のモチベーションやチャレンジ精神の向上にもつながっているものと考えております。
今後も国や民間企業への派遣を積極的に推進し、多様化する行政ニーズに対応できる広い視野や多角的な発想を有する若手職員の育成にしっかりと取り組んでまいります。
◯経済産業局長(矢野剛史君)
本県スタートアップの海外展開支援に関する御質問についてお答えを申し上げます。
本県ではこれまで、知事のトップセールスにより五か国十四のスタートアップ支援機関や大学等とのグローバルなネットワークを構築し、強い連携関係を築いてまいりました。現在こうした連携を活用し、アメリカや中国への市場展開を目指すスタートアップに対しまして、マッチング支援やシンガポールで開催される展示会へのスタートアップの出展支援等を実施しており、参加した複数のスタートアップが現地企業と秘密保持契約を締結するなど、着実に成果が生まれております。
今年五月の知事のアメリカ渡航におきましても、連携機関であるテキサス大学オースティン校から本県との新たな連携事業として、県内の若手起業家を一週間程度オースティンに派遣し、現地のエコシステムを学ぶプログラムの開催が提案されました。現在オースティン校とはこの提案の具体化に向けた検討を進めているところでありますが、今後もこうした連携内容の充実、強化を進めてまいります。
また、現在、プレ・ステーションAiでは、日本市場への進出を目指す海外スタートアップが十一社活動しております。海外スタートアップは、国内の事業会社等とのオープンイノベーションだけではなく、本県スタートアップとのプレ・ステーションAiでの日常的な交流により、海外展開への意欲をかき立てる契機ともなり得ることから、今後も海外スタートアップの誘致を積極的に進めてまいります。
来年十月にオープンを予定しておりますSTATION Aiは、フランス・パリのステーションFをモデルに、スタートアップのグローバルハブとなることを目指しております。引き続き海外のスタートアップ支援機関との連携を着実に進め、グローバルに活躍するスタートアップの誘引や県内スタートアップの海外展開支援の強化を通じまして、世界有数のスタートアップが集うグローバルイノベーション都市の実現を目指してまいります。
◯保健医療局長(吉田宏君)
本県では、楽しみながら運動したり、食生活の改善につながるスマートフォンアプリ、あいち健康プラスを開発し、運用しております。その利用実績でございますが、利用開始年度である二〇二〇年度は約一万一千件のダウンロードがございました。その後も順調に増加し、二〇二二年度までの累計で約四万二千件となっております。
次に、課題と今後の取組についてでございます。
このアプリは、県民の皆様の健康づくりを支援する有用なツールでございますが、さらなる利用の促進に向けた効果的な周知が課題と考えております。これまで、イベント会場における啓発のほか、市町村や企業の健康管理担当者に向けました会議など、様々な機会を捉え普及啓発に努めてまいりました。今後はこれまでの取組をさらに強化しつつ、新たにSNSを活用して、若い世代や働く世代などを対象とした周知に努めてまいります。
県では、県民の皆様が生涯を通じて健康で生き生きと過ごすことができる健康長寿あいちの実現を目指して、しっかり取り組んでまいります。
◯総務局長(川原馨君)
初めに、県債による資金調達についてお答えします。 本県では、債券市場において幅広い投資家に購入を募る市場公募債を中心として県債による資金調達を行っており、県債発行に当たっては、安定的な資金調達のため、様々な工夫を行っております。
具体的には、一時的な需要と供給の偏りの回避や、金利変動リスクの分散を図るための発行時期の平準化、投資家がニーズに応じて購入県債を選択可能とする多様な年限、条件による発行のほか、金融資本市場の動向等に応じて機動的な起債を行うため、発行計画において発行時期や償還年限等をあらかじめ特定しない発行枠としてのフレックス枠の設定などを行っております。このフレックス枠については、今年度、一千二百五十億円程度としており、これは市場公募債に占める割合としては過去最大となっているところです。
さらに、昨年度、環境改善効果のある事業に限定して発行するグリーンボンドを本県として初めて百億円発行いたしました。今年度は、新たな取組である他の道府県、政令市と共同で発行するグリーンボンドにも参加し、個別発行分と合わせて、昨年度の一・五倍となる百五十億円の発行を予定しております。
また、本県では、投資家に愛知県債を選んでいただけるよう、本県の強固な経済基盤や産業基盤、行財政改革の取組による健全な財政運営などについて説明するIR活動を積極的に行っており、今年度も五月までに九件のIRを実施したところです。
加えて、投資の判断材料としていただけるよう、国内、海外の機関から格付を取得しており、いずれも日本国債と同格、地方債の中では最上位の格付を継続しております。こうした取組により、投資家のニーズをしっかりと捉え、金融資本市場の先行きが不透明な中にあっても県債による確実な資金調達が行えるよう、引き続き取り組んでまいります。
次に、減債基金の資金運用についてお答えします。
本県の減債基金につきましては、県債の満期一括償還に備えるため、総務省の定めたルールに基づき、積み立てた分が二〇二二年度末で約八千七百億円となっております。この基金については、歳計現金の資金不足に備えるための短期運用や当該年度の県債償還等のための取崩しを除き、地方債等の債券による長期運用を中心に運用しております。
債券運用に当たっては、運用益の拡大に向けて、二〇一九年度から二〇二三年度までの五年間で債券運用額を七千億円以上とすることを目標として、運用額の拡大を図ってまいりました。その結果、二〇二二年度末の債券運用額は七千百二十五億円と目標を前倒して達成し、今年度末には七千五百億円を超える見込みとなっております。
なお、債券運用額のうち、五千億円については、将来にわたって各年度に満期を迎える債権の残高が一定となるように投資するラダー型運用という手法により運用することで金利の変動リスクを平準化し、長期的に安定した運用益が確保できるよう努めております。こうした運用により、今年度は、公債管理特別会計において約二十六億円の利子収益を見込んでおります。また、債券運用目標額の達成を踏まえ、債券運用に係る新たな目標の設定や、債券の種類、年限の組合せといった、いわゆるポートフォリオについて、今年度検討を行ってまいります。
引き続き安全な資金運用を第一としながら、確実な運用益を確保できるよう、減債基金の効果的な運用に取り組んでまいります。
◯知事(大村秀章君)
黒田太郎議員の質問のうち、スタートアップの海外展開支援について、私からもお答えをいたします。
本県の五か国十四機関、大学とのスタートアップ・エコシステム形成に向けた連携関係の中で、今年五月には、最初に共同事業を実施いたしましたテキサス大学オースティン校を訪問いたしまして、エコシステムの相互理解の強化など、より緊密な協力関係を築いていくことを確認いたしました。また、ヒューストンでは、STATION Aiと同様のインキュベーション機能を有するジ・アイオン、そして北米最大級の気候変動関連のスタートアップ支援拠点でありますグリーンタウン・ラブズを訪問いたしましたほか、医療関連のスタートアップを支援しているテキサスメディカルセンターではメディカルテックイノベーションの分野での連携について継続的に協議をしていくことで合意をしたところであります。
引き続き世界の先進的なスタートアップ支援機関、大学との連携を強化、拡大し、その強みを生かしたスタートアップの海外展開支援を拡充することにより、STATION Aiを中核に本県独自のスタートアップのグローバルハブの形成を目指してまいります。
◯三十七番(黒田太郎君)
知事はじめ、御答弁をいただきまして誠にありがとうございます。
それでは、要望をさせていただきます。
まずは、資金企画課であります。大変すばらしい課が誕生したと思います。職員の皆様の大活躍を期待しております。そして、その期待の中には、私が昨年十二月の代表質問で触れた金利上昇への備えが含まれます。近い将来か遠い将来か、緩やかか急激か予測はつきませんが、必ず訪れます。いや、もう訪れていると言っても過言ではありません。どんなに想定をしても、し過ぎることはありません。そして、そのとき重要となるのは、国や民間企業との人事交流の実績です。金利上昇は愛知県だけの問題ではありませんので、国や民間企業とも情報交換を密にしながら英知を結集して、様々な想定をしていかれることを強く要望します。
また、あいち健康プラスについてです。
健康寿命の延伸についても国家的な課題であり、愛知県がこれに役立つアプリを開発し、普及させることにつき、心から応援をさせていただきたいと思います。その一方で、民間でも同様のアプリが開発されています。ここで難しいのは、愛知県がこのアプリを磨いていかないと陳腐化してしまう可能性がある一方で、あまり優れたアプリを開発すると、今度は民業圧迫につながる可能性もあり、立ち位置が大変微妙であると思うのです。五月三十一日に、国が健康日本21第三次を推進する上での基本方針を公表しました。ここでは、誰もがアクセスできる健康増進のための基盤の整備やデジタル技術の活用などが盛り込まれています。県におかれましては、こうした方針を念頭に置きながら、当該アプリの役割を明確化することを要望し、私の発言を閉じさせていただきます。ありがとうございました。
あいち民主の黒田太郎です。私からは大きく四つ質問をさせていただきます。
まず初めに、外部組織への職員派遣についてです。
現在、世の中はグローバル化やデジタル化が加速度的に進展するとともに、カーボンニュートラルの実現に向けた変革の動き、大規模災害や感染症などのリスクの増大、人口減少、少子・高齢化の加速など、社会情勢が目まぐるしく変化しています。また、この五月には、新型コロナウイルス感染症が五類感染症に移行し、日本もウイズコロナからアフターコロナに転換しつつあり、社会経済活動を正常化していくことが愛知のみならず、日本全体の大きな課題であります。
このように、先を見通すことが難しい社会情勢の中、DXの推進による行政運営の効率化や生産性の向上、脱炭素社会への転換、防災・減災対策の推進、人口減少、少子・高齢化への対策、持続可能な地域社会の実現など、行政が取り組むべき課題は山積されており、迅速に対応していかなければなりません。
また、愛知県においては、ジブリパークの第二期開園、STATION Ai、愛知国際アリーナ、アジア・アジアパラ競技大会、リニア中央新幹線開業、中部国際空港第二滑走路の供用開始など、様々なビッグプロジェクトも進行しています。複雑・高度化していく政策課題に対応するとともに、様々なプロジェクトを円滑に遂行、成功させていくために何より大事なのは、職員の人材育成であります。
県では、二〇二〇年十二月に愛知県人材育成基本方針を策定し、目指す職員像として、一、自律的で、スピーディーかつスマートに行動する職員、二、行政のプロ意識と高い専門能力を持って行動する職員、三、サスティナブルな県庁を目指し、組織一体となって、いきいきと活躍する職員を掲げ、様々な人材育成に取り組んでいます。中でも、特に私が有意義だと考えるのは、外部組織への職員派遣です。
社会の急激な変化に対応し、グローバル化、デジタル化していく社会で県民ニーズに応えていくためには、県職員一人一人が担当業務にとどまらない幅広い視点を持ちながら、創造力と行動力を発揮していかなければなりません。県庁内部での業務を通じて研さんを積むことはもちろん、外部組織の知恵やノウハウを習得しながら職員個々の能力を高めていくことが大切です。そのような職員を育成するには、中長期的な視野に立って、積極的に外部組織に職員を派遣していくことも重要な取組の一つだと感じます。
例えば、国への派遣です。国に職員を派遣することで、国の予算編成や国会への対応、政策立案や法令整備、全国の自治体や各種団体との調整など、県庁では経験できない公務に従事することができます。また、国職員の仕事ぶりを間近で見ることは、県職員にとってもよい刺激になり、関係省庁で築いた人脈も今後の大きな財産になると思います。さらに、国の予算や法令改正の内容、県行政に関連する制度についての情報を迅速、正確に理解し、そこで得た知識を県の施策に反映することは非常に有益なことだと考えます。
そして、民間企業等への派遣です。愛知県には、製造業を中心に数多くの優良企業が存在しています。このような環境を有意義に活用するため、県内の様々な業種の企業に積極的に職員を派遣するべきだと考えます。民間企業の一員として、異なる価値観や文化を持つ方々と一緒に仕事をすることで、県庁を客観的に捉える機会になるとともに、職員の視野を広げ、柔軟性や発想力を養うことができると思います。また、企業独自のノウハウやコスト意識、仕事の進め方などを学ぶこともでき、そこで得た経験や知見を県行政に活用することで、より質の高い行政サービスを提供していくことが可能になると考えます。
国には、官民人事交流制度というものがあり、民間企業との交流人事を行っているそうです。行動原理が互いに異なる組織間での人事交流を通じて、相互理解の促進と双方における人材育成及び活用、組織運営の活性化などを図っているとのことです。愛知県においても、人材育成の取組の一つとして、国への派遣、民間企業との交流を推進しておられるとお聞きしています。ここまでお話ししてきたとおり、職員が外部組織の文化や風土、仕事の進め方を直接肌で感じながら、様々な経験を積むことは職員の能力向上や意識改革に非常に有益だと考えます。そして何より、愛知県に戻り外部組織に派遣された経験を生かし、県の仕事に生かしていくことが大切なことだと思います。
そこでお伺いいたします。
政策課題や県民ニーズの変化に迅速かつ的確に対応していくためには職員の人材育成が重要であり、国や民間企業などの外部組織への派遣が職員の能力向上や幅広い視野の醸成に有用であると考えますが、国や民間企業への職員派遣について、これまで県としてどのように取り組んできたのか。また、国や民間企業へ職員を派遣したことでどのような効果があり、今後どのように取り組んでいくのかについてお伺いいたします。
次に、本県スタートアップの海外展開支援についてです。
本県は、自動車産業を中心とするモノづくり企業の圧倒的な集積を生かし、スタートアップと有機的に結びつけることにより、独自のあいちスタートアップ・エコシステムの形成を目指しています。そして、その中核的な拠点となるSTATION Aiの開設が二〇二四年十月と、一年四か月後に迫っているところです。
先月、STATION Ai整備地の北側に隣接する鶴舞公園がリニューアルオープンされ、再整備された公園や新しい飲食店に多くの人がにぎわう様子が報道されました。一年四か月後には、これにSTATION Aiが加わり、さらに多くの人々が集う愛知県の新たな魅力的な空間になっていくことに思いをはせたところです。
しかしながら、世界的に見ると、我が国のスタートアップの現状はまだ黎明期にあると言わざるを得ません。スタートアップやテクノロジー企業、ベンチャーキャピタルに関する独自のデータベースを基にした有料情報サービスを運営しているアメリカのCBインサイツが、企業評価額十億ドル以上で創業十年未満の未上場のスタートアップを指すユニコーン企業を発表していますが、その最新版である二〇二三年四月七日付の状況を見ると、全世界のユニコーン企業の総数一千二百六社のうち、国籍別では、アメリカが半数を超える六百五十三社、続いて中国が百六十九社、インド七十社、イギリス四十九社、ドイツ二十九社となっている中、日本は僅か六社にとどまっている状況です。
この現状を打破するため、国は、昨年十一月にスタートアップ育成五か年計画を策定しました。この計画では、日本にスタートアップを生み育てるエコシステムを創出し、戦後に次ぐ第二の創業ブームを実現するために、スタートアップへの投資額を二〇二七年度には十兆円規模とすることを大きな目標に掲げ、将来的にはユニコーン企業を百社創出し、スタートアップを十万社創出することにより、我が国がアジア最大のスタートアップハブとして、世界有数のスタートアップの集積地になることを目指すとされています。こうした国の目標を達成するためには、日本最大のスタートアップ支援拠点であるSTATION Aiが先頭を切って牽引していく役割が求められていると考えます。一方で、日本のスタートアップが企業評価十億ドル、日本円にして約一千四百億円のユニコーン企業となるためには、日本国内だけでなくグローバルな市場展開が必須となると考えます。そのためには、日本国内での支援も必要だと思いますが、スタートアップや起業を志す方々が日頃から海外のスタートアップと切磋琢磨する環境を整備することや、海外を実際に訪問し経験を積む機会を提供するなど、海外への事業展開を見据えて行動するよう導いていくことが何よりも重要であります。 私は、昨年十二月の代表質問で、日本経済のみならず、世界経済の新しい流れをつくる企業がSTATION Aiから生まれることに対する期待を込めて、プレ・ステーションAiの取組状況とSTATION Aiへの成果の継承について質問させていただきました。その際、起業を志す若者たちが大きく成長、飛躍する場を提供する役割を現在のプレ・ステーションAiが果たしてほしいとも述べましたが、スタートアップの海外志向を高めるためには、プレ・ステーションAiに海外スタートアップを集め、日常的に海外スタートアップとの交流を図ることができるよう仕掛けていくことが必要ではないでしょうか。
また、海外でビジネスチャンスをつかむといっても、やみくもに海外に出かければいいというものではなく、やはり綿密な海外市場展開への戦略を立てた上で、信頼できる機関からの紹介など、少しでも成功確率を高めていくことが必要だと考えます。その点では、プレ・ステーションAiの統括マネジャーを中心とした支援の充実を期待するところです。それに加え、本県としては、知事が自ら率先してスタートアップ先進国を訪問され、各国の中心的なスタートアップ支援機関や大学と覚書等を締結し、現在、そのネットワークは、アメリカ、中国、シンガポール、フランス、イスラエルの五か国十四機関にまで拡大しています。また、先月のアメリカ渡航においても、スタートアップ支援の本県との連携機関であるテキサス大学オースティン校やヒューストンにあるスタートアップ支援機関を訪問され、協力関係の構築に向けた働きかけを行われたと伺っております。
そこで、このような機会で培ってきた本県の海外とのネットワークを最大限活用し、本県スタートアップの海外での挑戦の場と機会をつくり出していくことがSTATION Ai開業後も見据えた県の役割として重要ではないでしょうか。
そこでお伺いいたします。
これまで構築してきた海外のスタートアップ支援機関などとの連携を生かし、本県スタートアップの海外展開支援をどのように実施していくのか伺います。
次に、愛知県が開発した健康づくりを支援するアプリ、あいち健康プラスについてお伺いいたします。
健康支援アプリと聞いて、皆さんはどのようなアプリを想像されるでしょうか。例えば、毎日の血圧測定の結果を記録する、体重の変化を記録する、一日の歩数を記録するなどが思い浮かぶのではないでしょうか。あいち健康プラスは、こうした健康に関係する記録を登録し、御自身の健康管理に役立てていただくために愛知県が二〇二〇年度から運用しているアプリです。
私たちの生活において、健康が大切であるという点については、多くの方に理解していただけることだと思います。しかし、健康診断を受けて、体重測定や血液検査の結果などから、お医者さんにもっと運動したほうがよいですね、毎日ウオーキングに取り組んでみてはどうですかと言われたら、皆さんはどうされるでしょうか。分かってはいるけどなかなか難しい、あるいは取り組もうとしても毎日継続するのはと思われるのではないでしょうか。あいち健康プラスは、このようなときに毎日の健康づくりを助けてくれるものです。
私の知り合いにこのアプリを利用している方がいらっしゃいます。この方は、それまでの生活の中で運動不足を指摘され、実際に一日の歩数を調べてみたところ、五千歩にも届かない状況だったそうです。そこで、一日の目標を八千歩以上としてこのアプリを設定し使ってみたところ、毎日楽しくウオーキングに取り組むことができていると話してくれました。それを聞いて私もどんなアプリだろうと興味を持ち、いろいろと調べてみました。
先ほども申し上げましたが、毎日の忙しい生活の中に新しい運動習慣などを加えて、さらに続けていくということは非常に大変です。このアプリでは、一人でも健康づくりに取り組めますが、同じくアプリを利用している方と毎日の歩数を比べて、自分がどんな位置にいるか知ることができるランキング機能や、ふだんの生活で仲よくしている方々とグループ登録することで、グループ間のランキングが分かるなかよしグループ機能など、つながりを感じながら健康づくりができる点がよいところだと思いました。また、二〇二〇年一月以降、私たちの毎日の生活に大きな影響を及ぼした新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置づけが今年の五月八日に二類相当から五類へ移行しました。ちょうどこのアプリの配信を開始した頃が新型コロナウイルス感染症の感染防止対策の一つとして、行動制限により、外出の機会が減ったり、親しい人との交流機会が減ったりした時期に重なり、県民の皆様には健康づくりの機会を得にくいような状況もあったのではないかと思います。こうした中、今がこの三年余りの生活習慣を見直し、新たに健康づくりに取り組んでいただくタイミングとも言えます。
そこで、県民の健康の保持、増進を目指すあいち健康プラスの利用実績と課題及び今後の取組についてお伺いいたします。
結びに、県債による資金調達と減債基金の資金運用について伺います。
国の月例経済報告は、六月分がまさに本日夕方以降に公表される見込みでありますが、公表済みの五月の月例経済報告によりますと、景気は緩やかに回復している。先行きについては、雇用・所得環境が改善する下で、各種政策の効果もあって緩やかな回復が続くことが期待される。世界的な金融引締め等が続く中、海外景気の下振れが我が国の景気を下押しするリスクとなっている。また、物価上昇、金融資本市場の変動等の影響に十分注意する必要があるとされています。
金融資本市場の変動の影響に注意ということですが、昨年、二〇二二年は、金融資本市場が大きく動いた年でありました。二〇二二年二月のロシアのウクライナ侵攻により、世界的にエネルギー、食料価格の上昇が顕著となり、こうした物価上昇に対応するため、二〇二二年三月のアメリカを皮切りに各国中央銀行による利上げが行われました。日本銀行によるマイナス金利政策が継続される日本と諸外国との金利差が広がることとなり、急速に円安が進行、エネルギーや食料を輸入に頼る我が国の貿易収支は大幅に悪化するという流れになりました。
こうした経済の動きの中で、二〇二二年十二月に日本銀行が長短金利操作、いわゆるイールドカーブ・コントロールにおける長期金利の変動幅をプラスマイナス〇・二五%程度からプラスマイナス〇・五%程度に拡大し、我が国における長期金利も上昇していくこととなります。実際に、十年国債の利回りは、変動幅の拡大前後で〇・二八二%から〇・四三二%へと大きく上昇したところでありました。
国債の金利は、他の債券の金利の基準となるものであり、その変動は当然、地方公共団体の発行する地方債にも影響します。本県では、一般会計の二〇二三年度当初予算ベースで二千二百八十六億円という県債による多額の歳入を計上しております。県債は、ジブリパーク第二期オープンに向けた整備やSTATION Aiの建設をはじめ、本県が日本一元気な愛知としてますます発展していくために必要な事業を着実に進めていく上での貴重な財源であります。諸外国や日本銀行の金融政策により、金融資本市場の先行きが不透明な状況にあっても、安定的に県債を発行し、資金を調達していくことは、財政運営上非常に重要であると考えられるところです。
こうした中、本県では、総務局財政課の課内室であった財務資金室について、今年度から新たに資金企画課とし、資金調達や資金運用に関する体制を強化したものと承知しております。スピーディーな意思決定により変動する金融資本市場の中で効果的な起債運営が行われることを期待しております。
そこで伺います。
県債による安定的な資金調達に向けては、戦略的に取り組んでいかれる必要があるものと思いますが、県債の発行に際し、どのように取り組んでいかれるのか伺います。
次に、減債基金の資金運用について伺います。
さきに触れましたように、本県では、多くの県債を発行しておりますが、その県債の償還のための財源を蓄えておくことを怠ってはなりません。
例えば、住宅を購入した場合、高額な買物のため、長期の住宅ローンを組んで将来にわたって返済されることが多いと思いますが、返済方法は元金と利子の両方を毎月支払っていくことが一般的です。これとは異なり、県債の多くは、利子は定期的に支払っていきますが、元金は満期到来時に一括して償還を行う満期一括償還といわれる方法が取られており、満期到来時には元金返済のために多額の償還財源が必要となります。このため、本県では、県債の償還財源を確保するために減債基金を設け、毎年度その基金への積立てを行っているものと承知しております。積み立てた基金は県債の満期まで使われないため、長期の運用が可能な資金であると考えられます。もっと言えば、積み立てているだけではまさに宝の持ち腐れであり、しっかり資金運用を行うことが重要であります。当然のことでありますが、基金は大切な公金であります。リスクが高い運用方法を選択することはできないと思いますが、金利の上昇傾向が続いているとはいえ、まだまだ低金利の金融状況において賢く資金運用を行っていく必要があると考えます。
そこで、現在の減債基金の運用状況はどのようになっているか、また、今後の資金運用についてどのように取り組んでいかれるのか伺います。
以上で、壇上からの私の質問を終わらせていただきます。御清聴誠にありがとうございました。(拍手)
◯人事局長(権田裕徳君)
初めに、国や民間企業への職員派遣についてのこれまでの取組についてお答えします。
本県では、職員育成の取組として、県行政の枠を超えた幅広い視野や実践的な民間感覚などを身につけさせるため、毎年度国や民間企業への派遣を実施しております。
二〇二一年度からは、前年の十二月に策定しました愛知県人材育成基本方針に基づきまして、若手職員の育成を一層推進するため、デジタル関係などの新たな行政分野や業種への派遣を拡大しております。この結果、派遣者数は、基本方針策定前の二〇二〇年度と二〇二三年度を比較して、国への派遣者は二十六人から三十三人、民間企業への派遣者は九人から十三人と、いずれも増加してきております。
次に、派遣の効果と今後の取組についてお答えします。
まず、国への派遣につきましては、派遣者から、国会対応などで仕事に対するスピード感が養われた、国職員とのつながりができ、情報を入手しやすくなったといった声が寄せられており、高度な専門知識の習得や情報収集能力の向上などに寄与しているものと考えております。また、民間企業への派遣につきましては、復帰報告会におきまして、県庁勤務では学ぶことのできないスキルを身につけることができた、新鮮な気づきや学びが多く貴重な財産となったといった感想があり、県の内部では身につけることが難しい発想の習得や意識改革の促進につながっているものと認識しております。
さらに、若手職員の研修におきまして、派遣者による体験報告を行っており、受講者を対象としたアンケートの結果、九五・五%が自らの認識や行動を向上させる内容であったと回答しているほか、民間での働き方を経験することに興味が湧き、今後の選択肢の一つになったというコメントがあるなど、民間企業への派遣が若手職員のモチベーションやチャレンジ精神の向上にもつながっているものと考えております。
今後も国や民間企業への派遣を積極的に推進し、多様化する行政ニーズに対応できる広い視野や多角的な発想を有する若手職員の育成にしっかりと取り組んでまいります。
◯経済産業局長(矢野剛史君)
本県スタートアップの海外展開支援に関する御質問についてお答えを申し上げます。
本県ではこれまで、知事のトップセールスにより五か国十四のスタートアップ支援機関や大学等とのグローバルなネットワークを構築し、強い連携関係を築いてまいりました。現在こうした連携を活用し、アメリカや中国への市場展開を目指すスタートアップに対しまして、マッチング支援やシンガポールで開催される展示会へのスタートアップの出展支援等を実施しており、参加した複数のスタートアップが現地企業と秘密保持契約を締結するなど、着実に成果が生まれております。
今年五月の知事のアメリカ渡航におきましても、連携機関であるテキサス大学オースティン校から本県との新たな連携事業として、県内の若手起業家を一週間程度オースティンに派遣し、現地のエコシステムを学ぶプログラムの開催が提案されました。現在オースティン校とはこの提案の具体化に向けた検討を進めているところでありますが、今後もこうした連携内容の充実、強化を進めてまいります。
また、現在、プレ・ステーションAiでは、日本市場への進出を目指す海外スタートアップが十一社活動しております。海外スタートアップは、国内の事業会社等とのオープンイノベーションだけではなく、本県スタートアップとのプレ・ステーションAiでの日常的な交流により、海外展開への意欲をかき立てる契機ともなり得ることから、今後も海外スタートアップの誘致を積極的に進めてまいります。
来年十月にオープンを予定しておりますSTATION Aiは、フランス・パリのステーションFをモデルに、スタートアップのグローバルハブとなることを目指しております。引き続き海外のスタートアップ支援機関との連携を着実に進め、グローバルに活躍するスタートアップの誘引や県内スタートアップの海外展開支援の強化を通じまして、世界有数のスタートアップが集うグローバルイノベーション都市の実現を目指してまいります。
◯保健医療局長(吉田宏君)
本県では、楽しみながら運動したり、食生活の改善につながるスマートフォンアプリ、あいち健康プラスを開発し、運用しております。その利用実績でございますが、利用開始年度である二〇二〇年度は約一万一千件のダウンロードがございました。その後も順調に増加し、二〇二二年度までの累計で約四万二千件となっております。
次に、課題と今後の取組についてでございます。
このアプリは、県民の皆様の健康づくりを支援する有用なツールでございますが、さらなる利用の促進に向けた効果的な周知が課題と考えております。これまで、イベント会場における啓発のほか、市町村や企業の健康管理担当者に向けました会議など、様々な機会を捉え普及啓発に努めてまいりました。今後はこれまでの取組をさらに強化しつつ、新たにSNSを活用して、若い世代や働く世代などを対象とした周知に努めてまいります。
県では、県民の皆様が生涯を通じて健康で生き生きと過ごすことができる健康長寿あいちの実現を目指して、しっかり取り組んでまいります。
◯総務局長(川原馨君)
初めに、県債による資金調達についてお答えします。 本県では、債券市場において幅広い投資家に購入を募る市場公募債を中心として県債による資金調達を行っており、県債発行に当たっては、安定的な資金調達のため、様々な工夫を行っております。
具体的には、一時的な需要と供給の偏りの回避や、金利変動リスクの分散を図るための発行時期の平準化、投資家がニーズに応じて購入県債を選択可能とする多様な年限、条件による発行のほか、金融資本市場の動向等に応じて機動的な起債を行うため、発行計画において発行時期や償還年限等をあらかじめ特定しない発行枠としてのフレックス枠の設定などを行っております。このフレックス枠については、今年度、一千二百五十億円程度としており、これは市場公募債に占める割合としては過去最大となっているところです。
さらに、昨年度、環境改善効果のある事業に限定して発行するグリーンボンドを本県として初めて百億円発行いたしました。今年度は、新たな取組である他の道府県、政令市と共同で発行するグリーンボンドにも参加し、個別発行分と合わせて、昨年度の一・五倍となる百五十億円の発行を予定しております。
また、本県では、投資家に愛知県債を選んでいただけるよう、本県の強固な経済基盤や産業基盤、行財政改革の取組による健全な財政運営などについて説明するIR活動を積極的に行っており、今年度も五月までに九件のIRを実施したところです。
加えて、投資の判断材料としていただけるよう、国内、海外の機関から格付を取得しており、いずれも日本国債と同格、地方債の中では最上位の格付を継続しております。こうした取組により、投資家のニーズをしっかりと捉え、金融資本市場の先行きが不透明な中にあっても県債による確実な資金調達が行えるよう、引き続き取り組んでまいります。
次に、減債基金の資金運用についてお答えします。
本県の減債基金につきましては、県債の満期一括償還に備えるため、総務省の定めたルールに基づき、積み立てた分が二〇二二年度末で約八千七百億円となっております。この基金については、歳計現金の資金不足に備えるための短期運用や当該年度の県債償還等のための取崩しを除き、地方債等の債券による長期運用を中心に運用しております。
債券運用に当たっては、運用益の拡大に向けて、二〇一九年度から二〇二三年度までの五年間で債券運用額を七千億円以上とすることを目標として、運用額の拡大を図ってまいりました。その結果、二〇二二年度末の債券運用額は七千百二十五億円と目標を前倒して達成し、今年度末には七千五百億円を超える見込みとなっております。
なお、債券運用額のうち、五千億円については、将来にわたって各年度に満期を迎える債権の残高が一定となるように投資するラダー型運用という手法により運用することで金利の変動リスクを平準化し、長期的に安定した運用益が確保できるよう努めております。こうした運用により、今年度は、公債管理特別会計において約二十六億円の利子収益を見込んでおります。また、債券運用目標額の達成を踏まえ、債券運用に係る新たな目標の設定や、債券の種類、年限の組合せといった、いわゆるポートフォリオについて、今年度検討を行ってまいります。
引き続き安全な資金運用を第一としながら、確実な運用益を確保できるよう、減債基金の効果的な運用に取り組んでまいります。
◯知事(大村秀章君)
黒田太郎議員の質問のうち、スタートアップの海外展開支援について、私からもお答えをいたします。
本県の五か国十四機関、大学とのスタートアップ・エコシステム形成に向けた連携関係の中で、今年五月には、最初に共同事業を実施いたしましたテキサス大学オースティン校を訪問いたしまして、エコシステムの相互理解の強化など、より緊密な協力関係を築いていくことを確認いたしました。また、ヒューストンでは、STATION Aiと同様のインキュベーション機能を有するジ・アイオン、そして北米最大級の気候変動関連のスタートアップ支援拠点でありますグリーンタウン・ラブズを訪問いたしましたほか、医療関連のスタートアップを支援しているテキサスメディカルセンターではメディカルテックイノベーションの分野での連携について継続的に協議をしていくことで合意をしたところであります。
引き続き世界の先進的なスタートアップ支援機関、大学との連携を強化、拡大し、その強みを生かしたスタートアップの海外展開支援を拡充することにより、STATION Aiを中核に本県独自のスタートアップのグローバルハブの形成を目指してまいります。
◯三十七番(黒田太郎君)
知事はじめ、御答弁をいただきまして誠にありがとうございます。
それでは、要望をさせていただきます。
まずは、資金企画課であります。大変すばらしい課が誕生したと思います。職員の皆様の大活躍を期待しております。そして、その期待の中には、私が昨年十二月の代表質問で触れた金利上昇への備えが含まれます。近い将来か遠い将来か、緩やかか急激か予測はつきませんが、必ず訪れます。いや、もう訪れていると言っても過言ではありません。どんなに想定をしても、し過ぎることはありません。そして、そのとき重要となるのは、国や民間企業との人事交流の実績です。金利上昇は愛知県だけの問題ではありませんので、国や民間企業とも情報交換を密にしながら英知を結集して、様々な想定をしていかれることを強く要望します。
また、あいち健康プラスについてです。
健康寿命の延伸についても国家的な課題であり、愛知県がこれに役立つアプリを開発し、普及させることにつき、心から応援をさせていただきたいと思います。その一方で、民間でも同様のアプリが開発されています。ここで難しいのは、愛知県がこのアプリを磨いていかないと陳腐化してしまう可能性がある一方で、あまり優れたアプリを開発すると、今度は民業圧迫につながる可能性もあり、立ち位置が大変微妙であると思うのです。五月三十一日に、国が健康日本21第三次を推進する上での基本方針を公表しました。ここでは、誰もがアクセスできる健康増進のための基盤の整備やデジタル技術の活用などが盛り込まれています。県におかれましては、こうした方針を念頭に置きながら、当該アプリの役割を明確化することを要望し、私の発言を閉じさせていただきます。ありがとうございました。