

令和4年12月定例会(第2号) 本文 2022-12-05
◯十九番(黒田太郎君)
新政あいち県議団政策調査会長の黒田太郎です。
新政あいち県議団を代表して、順次質問をさせていただきます。
初めに、新型コロナウイルス感染症に対応する医療提供体制についてお伺いいたします。
皆さん、新型コロナウイルス感染症について、第一波から第七波までの新規陽性者数の推移を思い浮かべてください。第一波以降、新規陽性者数の山は徐々に高くなり、第七波が最も高い山になったと思います。イメージですけれども、第一波、第二波、第三、第四と来て、五、六、七と、こういった感じではないでしょうか。
私たちは、これまでワクチン接種を繰り返し、マスクを着用し続けましたが、波は高くなっていきました。そして、飲食店に対しては、新型コロナウイルス感染症が蔓延した当初から感染源であると言われ続け、新規陽性者数が増加するたびに営業規制がかけられました。しかし、一番高い第七波においては、営業規制がかけられないまま、大きな波は次第に引いていき、今はまた新しい波が寄せています。
私は、これまでの対応が間違っていたと申し上げるつもりはございません。むしろ、社会が未知の敵と戦うときに、正しいと思われる施策を国主導で講じていくのは当然のことだと思います。しかし、それで終わらせては社会の発展につながりません。これまでの対応や事態を検証し、科学的知見を蓄積して後世に残すことが非常に重要です。
このことは、私たち新政あいち県議団が十月十三日に知事にお渡しした提言書の中で最重点要望事項として取り上げておりますので、この場で改めて申し上げさせていただきます。
さて、このような波を経る中で、本県の医療提供体制については、二〇二〇年二月当初は最大確保病床が七十二床でありましたが、一年後の二〇二一年二月には千二百十五床、第五波の二〇二一年九月には千七百二十二床、そして、二〇二二年八月には二千五百四十床と、感染の拡大状況に応じて整備されてきました。
また、発熱外来である診療・検査医療機関についても拡充されております。しかしながら、本年六月二十一日から始まった第七波では、感染力が非常に強いオミクロン株等により、八月十七日に新規陽性者数が過去最多、一万八千九百八十五人となるなど、これまでにない規模で感染が拡大し、医療現場では、発熱患者が診療・検査医療機関に集中し、医療体制が逼迫する状況となりました。
そのため、オミクロン株の特性である重症化率が低く、軽症となる場合が多いことを踏まえ、幅広い医療機関でコロナ患者を診ることが必要になると考えます。
そこでお伺いします。
この冬には、新型コロナウイルス感染症の再拡大や季節性インフルエンザの同時流行など、第七波を上回る感染拡大が生じると懸念されていますが、県としては、患者の受入れができなくなるなどの医療機関の逼迫を防ぐため、どのように取り組んでいかれるのか、知事の御所見をお伺いいたします。
次に、安全・安心の確保についてであります。
まず、土砂災害対策の推進についてお伺いします。
近年、全国各地で様々な自然災害が発生しています。二〇一八年の西日本豪雨では、広島県をはじめとして三十二の道府県で約二千六百件の土砂災害が発生し、百十九名もの貴い命が失われ、平成以降最大の被害となりました。
今年も十月末時点で、全国で七百五十八件の土砂災害が発生し、二名の犠牲者が出るなど、多くの被害が発生しております。
今年九月に発生した台風十五号においては、お隣の静岡県では、線状降水帯による大雨で百六十三件の土砂災害が発生し、一名の方が亡くなり、三十五の家屋が被害を受けました。また、流木が取水口を塞ぐことによる約七万戸の断水や、鉄塔施設の倒壊による約十二万戸の停電が生じるなど、人命や暮らしに多大な影響が出たことは記憶に新しいところであります。
このように土砂災害の状況を見聞きしたとき、大規模災害はもとより、一たび台風が近海を通過しただけでも大きな被害が生じることもあり、土砂災害対策をしっかりと進める必要があると考えます。
国土交通省によりますと、長野県岡谷市の小田井沢川では、二〇〇六年七月に土石流により七名の方が亡くなられるなどして、これらの被害を受け、四基の砂防堰堤整備がされました。この地区では、二〇二一年八月に再び土石流が発生しましたが、整備した砂防堰堤が土石流を受け止め、被害を防いだとのことです。改めて土砂災害防止施設の必要性を感じたところであります。
また、広島県広島市では、二〇二一年八月に西日本豪雨と同規模の大雨により土砂災害が発生したにもかかわらず、事前に住民が避難して人的被害を免れた事例が多く報告されております。このように被害を軽減するためには、防災意識の向上を図っていくことも大切ではないかと考えております。
今年九月の台風十五号では、本県でも初めてとなる顕著な大雨に関する情報が発表され、線状降水帯による大雨が発生しました。幸い本県では犠牲者は出ておりませんが、大規模な土砂災害はいつ起こってもおかしくない状況にあります。
そこでお伺いします。
人命を保護し、土砂災害による被害を最小限に食い止めるため、県ではどのような取組を進めていかれるのか、知事の御所見をお伺いいたします。
次に、交通事故防止対策の推進についてお伺いします。
昨日現在の交通事故死者数は百二十五人で、前年に比べプラス十八人と大幅に増加しており、全国順位は大阪府に次いでワースト二位と極めて憂慮すべき状況となっています。
本年の交通死亡事故の特徴を見ますと、十月末現在で、当事者別では歩行者の死者が四十五人と、前年同時期に比べプラス十六人と大きく増加しており、年齢別では高齢者の死者の割合が全体の四割以上を占め、依然として他の年齢層よりも高く、また、幼い子供が犠牲になる死亡事故も発生しています。
悲惨な交通事故をなくしていくためには、こうした交通弱者の保護が重要であり、特に地域住民の生活に密着し、通学路に指定される例も多い生活道路においては、歩行者が安全に通行できる環境の整備が必要となります。
この点について、第十一次愛知県交通安全計画には、生活道路等における人優先の安全・安心な歩行空間の整備が盛り込まれており、幹線道路へ自動車交通を転換させることによる徹底した通過交通の排除や、車両速度の抑制等のゾーン対策に取り組み、高齢者、障害者、子供などが安心して通行できる道路空間の確保を図ると記載されております。
これまで生活道路の安全対策として、警察は、歩行者等の安全な通行を確保するため、最高速度三十キロの区域規制等を実施するゾーン30を推進し、昨年度末現在で二百六十二か所に整備をしたと伺っております。
ちなみに、なぜ三十キロなのかというと、自動車が歩行者と衝突したときの速度が三十キロを超えると歩行者の致死率が急上昇するからであり、三十キロは生死を分ける境界線とも考えられます。
一方、道路管理者は、生活道路における対策として、道路上に膨らみを設けるハンプや、道路の幅をラバーポールなどで狭くする狭さくといった物理的デバイスの設置等を推進することにより、通過車両の速度やエリア内への進入の抑制を図ってきたものと承知しております。
現在進めているゾーン30プラスは、生活道路において、警察の行う最高速度三十キロの区域規制と、道路管理者の行う物理的デバイスを適切に組み合わせることで大きな相乗効果が期待されます。
ゾーン30プラスが整備されていけば、より多くの悲惨な交通事故が防止でき、まさに命を守る施策になると思われますが、残念ながら本年十一月末までに愛知県内での導入事例はないと承知しています。
そこでお伺いします。
ゾーン30プラスを今後どのように進めていかれるのか、警察本部長の御所見をお伺いします。
次に、持続的な本県産業の振興についてであります。
まず、自動車産業に対する支援についてお伺いします。
自動車産業は、製造品出荷額等が約六十兆円と全製造業の一八・六%を占め、また、関連産業も含めると就業人口が約五百五十万人に上るなど、言うまでもなく我が国の産業、経済を牽引しています。特に本県の自動車産業は、製造品出荷額ベースで全国四二・六%のシェアを占めており、我が国の成長エンジンとしての役割を果たしてきました。
一方で、自動車産業を取り巻く環境は、CASE、MaaSの進展やカーボンニュートラルの高まりにより、百年に一度の大変革期を迎えています。
我が国でも、二〇二〇年十二月に出された二〇五〇年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略の中で、二〇三五年までに乗用車新車販売でハイブリッドを含む電動車一〇〇%を実現することが明記されました。
さらに今後、人を運転から解放する自動運転、インターネットとつながるコネクテッド化、所有から使用に変わるシェアリング化が進展するにつれて、自動車産業に構造変化をもたらすだけではなく、生活、社会をも大きく変えると予想されます。
こうした変化は、新たな価値を創出し、環境や高齢化、労働力不足といった社会課題の解決につなげる新たなビジネスの好機であり、こうしたチャンスを捉え、イノベーションを興していくことが必要です。
CASEのうち、自動運転の実現に向けては世界中で様々な取組が行われています。自動車関連企業のみならず、IT企業も加わり、その開発にしのぎを削っている状況にあります。
本県においても、自動運転の社会実装を目指し、全国に先駆けた実証実験が進められているところです。今後はこうした取組を推し進め、より利便性が高く、安全・安心な自動運転の社会実装の在り方についても検討を進めていく必要があります。
一方で、既存の自動車部品製造企業にとっては、事業戦略の見直しが必要となることも想定されます。電動化が進み、動力がエンジンからモーターに替わると、部品点数は約三万点から一万点ほど減少すると言われています。自動車産業が従来の車から次世代自動車に進化を遂げる機会を捉えて、自動車関連企業は、自社の強みを深化させることに加え、新たな価値を生む事業を探索していく必要があると考えます。
そこでお伺いします。
自動車産業が激動の時代を迎える中、自動車メーカーやサプライヤーに対して総合的、多面的な支援が必要と考えますが、今後どのように取り組んでいかれるのか、知事の御所見をお伺いいたします。
次に、豊かな水産資源を育む海づくりについてお伺いします。
伊勢湾、三河湾は、木曽川、矢作川、豊川などの大河川からの豊かな栄養により多くの生物が育まれ、さらに、干潟や浅場が発達して魚の産卵や成育の場となっていることから、古くから豊かな漁場として多種多様で豊富な海の恵みをもたらしてきました。
現在でも、アサリやガザミ、シラスなどは全国有数の産地で、ノリの養殖も盛んに行われています。特にアサリは、十八年連続で全国一位の生産量を誇っております。
しかし、アサリの生産量は、二〇一四年以降年々減少しており、最盛期の約二万トンから二〇二一年にはその一割程度にまで減少しています。また、ノリの養殖では、近年の栄養不足による色落ちなどが影響して、二〇二一年の収穫量は八千トンと五年前の約六割となっています。
漁業者からは、最近、海が痩せてきており、アサリが育たない、シャコやアナゴが獲れなくなったなどの声が出ていると聞いております。
近年では、伊勢湾、三河湾の水質改善を図る取組により、陸から海に流入する窒素やリンの量が減少したため、海ではプランクトンの発生に必要な栄養が不足し、魚介類が成長するのに必要な餌が少なくなるなど、生物を育む力、いわゆる漁場の生産力が低下していると指摘されています。
また、沿岸域の開発に伴う埋立てにより、多くの魚介類の生息場となる干潟や浅場がなくなってしまったことも魚介類が減少した原因と言われています。
今後、本県水産業が持続的に発展していくために、また、県民の皆様に豊かな海の恵みを届けていくためには、漁場の生産力の強化や水産資源の増大を図ることが極めて重要な課題であると考えます。
県では、これらの課題に加え、就業者の高齢化や担い手不足など、水産業を取り巻く様々な厳しい状況に対処するため、昨年三月に豊かな水産資源を育む海づくり、漁業者が儲かる経営体づくり、未来につながる水産業の構造改革の三つを柱とした愛知県漁業振興計画を策定し、様々な施策に取り組んでいます。中でも、豊かな水産資源を育む海づくりは、漁業生産者を支える根幹的な取組と考えます。
そこでお伺いします。
漁場生産力の強化や水産資源の増大への対応など、豊かな水産資源を育む海づくりについて、今後どのように取り組んでいかれるのか、知事の御所見をお伺いいたします。
次に、さらなる愛知の発展についてであります。
まず、プレ・ステーションAiについてお伺いいたします。
現在、ソフトバンク株式会社の一〇〇%子会社であるSTATION Ai株式会社が中心となり、二〇二四年十月の供用開始に向けて、スタートアップの創出、育成、展開を図るための拠点施設となるSTATION Aiの整備が進められています。
私は、大きな期待を込めてこの事業を見詰めています。なぜならば、STATION Aiから誕生する企業の中から、日本経済、場合によっては世界経済の新しい流れをつくる企業が生まれる予感がするからです。
遡れば、トヨタ自動車株式会社もパナソニック株式会社も創業当時は小規模事業者でした。これは、GAFAMと呼ばれる米国IT企業の雄であっても同じことではないでしょうか。
創業者が志を立て、世の中のニーズを酌み取って企業を大きくすることは、納税、雇用創出、新規サービスの提供などの面で社会に大きく貢献することになりますから、そうした企業が早く、数多く生まれるように議会人としても最大限応援したいと思います。
このように、STATION Aiが注目される中ではありますが、私は、県が名古屋駅に程近いささしまライブのWeWorkグローバルゲート名古屋内で先行的に実施しているプレ・ステーションAiにも注目しています。
プレ・ステーションAi統括マネジャーを務める篠原氏は、かつては起業家であり、現在はエンジェル投資家として活躍しており、成功も失敗も、国内も海外も、様々な経験をされておられます。その篠原氏がプレ・ステーションAiにいらっしゃるのであれば、これは相当面白い施設になるだろう、そのように思いました。
私は、高校生、大学生、若手社会人を連れて、篠原氏に会いにプレ・ステーションAiに行きました。施設を見渡すと、明るい空間の中で、夢と現実のはざまにもがく起業志望家が多数おり、彼らが先に起業を果たした方の話を食い入るように聞く姿もありました。何かが起きそうな熱気を感じることができたのです。プレ・ステーションAiに起業家を志す若者たちが集まり、彼らがそこで切磋琢磨し、大きく成長、飛躍していける、そのような場を提供する役割をプレ・ステーションAiが果たすことが非常に重要であると思います。
また、この地域から起業家を生み育てることも大切ですが、一方で、彼らを支える投資家の存在も重要ではないかと思います。
スタートアップは、創業の初期段階における資金力が脆弱であり、外部からの投資資金を必要とします。せっかく起業家を多く生み出しても、資金面での支援が不十分であれば、スタートアップは成長することができません。
民間の調査によれば、二〇二一年の国内スタートアップの資金調達額は七千八百一億円と言われておりますが、このうち東京都が六千五百三十一億円で八三・七%を占めており、愛知県は三十八億円、約〇・五%にとどまっております。
起業家と投資家は車の両輪のような関係にあります。間もなく一兆円市場に迫るとも言われるスタートアップの資金調達市場において、この愛知でも、起業家と投資家がバランスよく存在するスタートアップ・エコシステムの形成が必要ではないでしょうか。
そこでお伺いします。
スタートアップの成長や資金調達など、プレ・ステーションAiではこれまでにどのような成果が得られたのか、また、その成果をSTATION Aiにどうつなげていかれるのか、知事の御所見をお伺いいたします。
次に、アジア競技大会、アジアパラ競技大会を活用した地域活性化についてお伺いいたします。
二〇二六年に愛知・名古屋でアジア最大のスポーツの祭典である第二十回アジア競技大会が開催されます。現在、大会コンセプトであるアスリートファーストの視点を踏まえながら、簡素で質素、機能的で合理的な大会を目指して、組織委員会を中心に、競技や選手村、輸送、宿泊などの大会運営について鋭意取り組んでいると思います。
一方、県では、この大会を単なるスポーツ大会の開催にとどめることなく、地域の活性化につなげていくため、二〇一九年三月にアジア競技大会を活用した地域活性化ビジョンを策定しております。
本ビジョンでは、スポーツ・健康、観光・文化、地域経済・産業、人材育成・国際貢献の各分野において、大会を契機として目指す姿や取組を示しており、既にあいちトップアスリートアカデミーやアジア間交流フレンドシップ、ボランティア人材の育成等の取組を推進していると承知しております。
その中でも、あいちトップアスリートアカデミーにおいては、アーチェリー競技のユースアカデミー生が県高校新人大会で二位入賞の上、全国高校選抜大会に出場するなど、既に実績を上げているものもございます。
そのような中、本年四月には第五回アジアパラ競技大会の愛知・名古屋での開催が決定したことを受け、現在、本ビジョンの改訂に取り組んでいると伺っております。
アジアパラ競技大会は、四年に一度開催されるアジア最大の障害者スポーツの祭典であり、アジアのパラアスリートが集う夢の舞台です。この大会を愛知・名古屋で開催することは、障害への理解や障害のある方の社会参加の促進に寄与するとともに、障害者スポーツを応援する方々の交流の促進につながることが大いに期待されます。
このようなまたとない機会を生かし、ビジョンにしっかりと方向性を位置づけることにより、多様性を尊重し合う共生社会の実現に向けて、本県が日本、さらにはアジアをリードしていくことが重要であると考えております。
そこでお伺いします。
本ビジョンの改訂を進める中で、両大会を活用した地域活性化の推進に向けて、県として今後どのように取り組んでいかれるのか、知事の御所見をお伺いいたします。
次に、カーボンニュートラル社会の実現に関し、中小企業の地球温暖化対策についてお伺いいたします。
脱炭素社会の実現に向けた社会的機運が高まっていますが、本県は産業県であるがゆえに温室効果ガスの排出量が全国最多レベルであり、このうち約六割強を占める産業・業務部門の削減対策が課題となっています。
大企業では脱炭素経営への取組が広がっており、また、多くの大企業は、二〇五〇年のカーボンニュートラルを見据えた二〇三〇年度の具体的な排出量の削減目標を策定しており、自身の事業活動からの温室効果ガス排出量の把握や、その削減に向けての設備投資、研究開発等に取り組んでいるところです。
さらに、近年、サプライチェーン全体でカーボンニュートラルを目指す大企業が増加しており、一部の大企業では、サプライチェーンの一端を担う中小企業に対しても、排出量の削減目標の設定や具体的な取組を求めています。
二〇二一年七月に商工中金が実施した中小企業のカーボンニュートラルに関する意識調査によると、カーボンニュートラルの進展が経営に好影響または悪影響を与えると回答した企業は全体の七一%と何らかの影響を感じている企業が多いものの、具体的な方策を実施または検討していると回答した企業は二〇%にとどまっています。
多くの中小企業は、脱炭素に向けた急激な社会情勢の変化に戸惑っており、温室効果ガス削減に向けた具体的な対策に着手できていないということになり、このことに私は強い危機感を抱きます。
中小企業の多くは財政基盤が必ずしも盤石ではなく、情報や知識、そして人材面での制約もあります。また、省エネ設備の導入などの初期コストの高い対策は取りにくいのも現状です。
SDGsの考え方が社会に浸透していく中で、SDGs未来都市である本県は、誰一人取り残さない社会の実現を目指しています。カーボンニュートラルの大きな潮流に直面する中小企業の現実に寄り添った支援がぜひとも必要であると考えます。
そこでお伺いいたします。
地球温暖化対策を着実に進め、一刻も早くカーボンニュートラルを実現するために、本県産業の屋台骨を支える中小企業への支援についてどのように考えておられるのか、知事の御所見をお伺いします。
次に、誰もが活躍できる社会の実現についてであります。
まず、健康寿命の延伸についてお伺いいたします。
皆さんは、一ドルの投資に対して三ドルのリターンという言葉を聞いたことがあるでしょうか。これは、アメリカのジョンソン・エンド・ジョンソンが世界でグループ二百五十社約十一万四千人に健康教育プログラムを提供して、そのプログラムに基づく投資とリターンを表したものです。お聞き及びの方も多いかと思います。
ここでいう投資とは、健康や医療に関わるスタッフ、事務スタッフに必要な人件費、診療施設やフィットネスルームなどに必要な設備費です。では、リターンは何かというと、欠勤率の低下や勤労意欲の向上などからくる生産性の向上、企業が負担する医療コストの削減、企業イメージの向上や、それに伴う就職人気ランキングの上昇などが挙げられます。
これだけはっきりした結果が出ているなら、企業はこうしたプログラムを取り入れ、いわゆる健康経営を実践すべきと考えますし、経営者の実践に何らかの障害があるのであれば、それを取り除いて後押しすべく、行政が手を差し伸べるべきと考えます。
また、個人に目を向けると、健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間、いわゆる健康寿命が長くなることがその人の幸せにつながると考えられます。さらに、そうした個人が増えて、社会全体として平均寿命と健康寿命の差が縮まれば、税や社会保険料負担の軽減を通じて社会全体の幸せにもつながると考えられます。
いかにして健康寿命を延ばすかについては、様々な手法や考え方がありますが、一般社団法人日本セルフケア推進協議会では、セルフケア、すなわち健康に関する関心、正しい理解、予防、健康づくりが重要であると提唱しています。
同協議会が本年四月に厚生労働省に提出した要望書には、予防、健康づくりの費用負担軽減やインセンティブを税制や予算措置で対応する新たな大原則を確立いただくこととあり、医療や介護とは異なり、公的保険が適用されない予防、健康づくりへの行政からの支援も求めています。
今後も少子・高齢化が進むと予測される中では、高齢者を支える現役世代の数がますます減少し、現役世代の負担増加に伴い、子供を産み育てる意欲の減退につながることで、少子・高齢化に拍車がかかるといった悪循環に陥る可能性があります。
そこでお伺いいたします。
この悪循環を絶つ一つの手段として、個人、法人に対する健康づくりの推進施策が重要になると考えますが、どのように取り組まれるのか、知事の御所見をお伺いします。
次に、少子化対策の推進についてお伺いいたします。
我が国では、これまで、子供に関する様々な施策の充実に取り組んできましたが、少子化の進行、人口減少に歯止めがかかっていません。また、児童虐待相談件数や不登校児童生徒数が過去最多になるなど、子供を取り巻く状況は深刻であり、コロナによる環境変化がそうした状況に拍車をかけていないかと大変心配しております。
こうした中、国においては、常に子供の最善の利益を第一に考え、子供に関する取組、政策を我が国社会の真ん中に据えて、子供の健やかな成長を社会全体で後押しするため、来年四月にこども家庭庁を設置し、これまで内閣府、厚生労働省、文部科学省等がそれぞれ担ってきた子供に関する施策を一体的に実施することとなりました。
あわせて、従来、それぞれの法律に基づいて、国の関係省庁や地方自治体で進められてきた子供に関する取組の基盤となる基本理念などを明らかにし、子供施策を社会全体で総合的かつ強力に実施するための包括的な基本法として、こども基本法が施行されます。
本県の少子化の現状を見ますと、二〇二一年の合計特殊出生率は一・四一であり、全国平均の一・三〇を〇・一一ポイント上回り、全国順位は二十三位となっています。大都市を抱える都道府県の中では比較的高いものの、安定的に人口を維持できると言われている二・〇七を大きく下回っており、少子化傾向は続いております。
このまま少子化が進行すると、生産年齢人口の減少と高齢化を通じて、労働供給の減少、将来の経済や市場規模の縮小、現役世代の負担の増加など、社会経済に多大な影響を及ぼすことが懸念されます。
少子化の要因は多岐にわたるため、対策も幅広い視点から総合的に対応すべきであり、共働き世帯、片働き世帯など全ての世帯を対象に、結婚、妊娠、出産、子育て、子供の自立といった全てのライフステージにわたる支援が重要であります。
子供は地域社会の宝です。子供を取り巻く環境が大きく変わる中、改めて少子化という県民共通の課題に真正面から立ち向かう時期に来ていると考えます。
そこでお伺いします。
本県では、これまで少子化対策にどのように取り組んでこられたのか、また、今後どのように取り組んでいかれるのか、知事の御所見をお伺いいたします。
次に、愛知県人権尊重の社会づくり条例に基づくインターネット上の誹謗中傷等の防止に向けた取組についてお伺いします。
インターネットの普及に伴い、多くの人がその恩恵にあずかっているところですが、その一方で、発信者の匿名性、情報発信の簡易性といった特性を悪用した個人に対する誹謗中傷や差別を助長する表現が書き込まれているなど、インターネット上では人権に関わる問題が数多く発生しています。
インターネット上の書き込みにより誹謗中傷などの被害にあった場合は、国の人権擁護機関である法務省の人権相談窓口や、総務省の違法・有害情報相談センターなどの機関に相談することが可能となっていますが、本年三月に法務省が公表した令和三年における人権侵犯事件の状況によると、新規に救済手続を開始したインターネット上の人権侵犯事件の数は、二〇二一年が千七百三十六件と、二〇一七年の二千二百十七件をピークに、ここ数年、高水準で推移しています。
こうした状況を踏まえ、国においては、インターネット上の誹謗中傷などによる権利侵害について、より円滑に被害者救済を図るため、特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律、いわゆるプロバイダ責任制限法を昨年改正し、本年十月一日から施行いたしました。これにより、これまで発信者を特定するために二回の裁判手続を経ることが一般的だったところ、一回の手続で行うことが可能となりました。
また、インターネット上の誹謗中傷を抑止するためには、悪質な侮辱行為に対して厳正に対処することが必要であるとして、これまで侮辱罪の法定刑が、三十日間の拘留、一万円未満の科料であったところ、本年七月から、一年以下の懲役、禁固、三十万円の罰金に厳罰化されたところです。
このように、国において、インターネット上の誹謗中傷を防止するための法整備が進む中、本県では、今年度、愛知県人権尊重の社会づくり条例が施行され、その中で、インターネット上の誹謗中傷等の未然防止及び被害者支援が規定されました。
条例では、インターネット上の誹謗中傷等を未然に防止するために必要な教育、啓発その他の施策や、被害者の支援を図るために必要な施策を講ずることとされておりますが、こうした取組を着実に推進していくことにより、条例が実効性のあるものになることを期待しております。
そこでお伺いいたします。
インターネット上の誹謗中傷等を防止し、被害者を支援するため、現在どのような取組を行っているのか、また、今後どのように取り組んでいかれるのか、知事の御所見をお伺いいたします。
結びに、金利上昇に備えた財政運営についてお伺いいたします。
アメリカ連邦準備制度理事会は、今年に入り、六会合連続で利上げを行い、政策金利の誘導目標を下限三・七五%から上限四%にすることを決定しました。これは、二〇〇八年一月以来の高水準となっています。
ヨーロッパに目を転じると、欧州中央銀行でも今年に入って三回、幅でいうと計二%の政策金利引上げを行っています。
一方、日本はどうでしょうか。日本銀行の黒田総裁は、十月のG20において各国に対し、現状の大規模な金融緩和を継続すると説明したようですが、欧米との金利差が開くことで円は売られ、ドルやユーロが買われ、円安が進行しています。
ちなみに、昨年末の外国為替相場を見ると、一ドル百十五円程度でした。これがその後、円安方向へ大きく変動し、十月二十日には東京外国為替市場で一時百五十円台となり、一九九〇年八月以来約三十二年ぶりの安値をつけました。
その後、十二月二日時点では一ドル百三十四円台となりましたが、これほどまでに急激に円安が進むと、輸入物価の上昇が無視できなくなります。十月値上げという言葉が盛んに言われましたが、私たちは今、日用品や食料品、光熱費などの値段が徐々に上がってきていることを生活の中で実感しています。
ちなみに、日本の消費者物価指数を見てみると、十月は前年同月比三・六%の上昇となっており、上昇幅は月を追うごとに拡大基調となっています。
それでは、輸入品全体の物価上昇を主因とした国内物価の上昇が生じているからといって、金融当局がすぐに利上げに踏み切るかといえば、疑問符がついています。国内景気に力強さがない中での利上げには相当悩むであろうと想像されるからです。
さりとて、現状の物価上昇をいつまでも放置できるかといえばそうもいかないことから、いつかは難しい決断を迫られる時期が来るかもしれません。
本県の本年度当初予算における一般会計の県債発行総額は二千八百六十億円、全会計では約五千億円となっております。仮に金利が上昇すれば、県の財政運営に少なからず影響が生じるものと考えられます。
このため、たとえ杞憂に終わったとしても、金利の上昇を危機管理上の問題と捉え、日頃から財政運営を進めていくことが重要ではないでしょうか。
もちろん、このことは愛知県に限らず国全体の問題でもありますので、県は、国の財政当局、金融当局と連携して、金融経済の機微に対して感度を高めていくことも必要であると考えます。
そこでお伺いします。
金利上昇に備え、県としてどのように財政運営に取り組まれるのか、知事の御所見をお伺いします。
以上、新政あいち県議団を代表して県政各般にわたる様々な課題についてお尋ねいたしました。真摯な御答弁をお願い申し上げまして、壇上からの質問を終わります。御清聴ありがとうございました。(拍手)
〔知事大村秀章君登壇〕
◯知事(大村秀章君)
それでは、新政あいち県議団の黒田太郎政策調査会長の質問にお答えをいたします。
初めに、新型コロナウイルス感染症に対応する医療提供体制についてお答えをいたします。
感染者が大幅に増加した場合においても、十分に対応できる医療提供体制を確保することは大変重要であると認識をいたしております。
現在の新規陽性者数は、十月中旬より増加傾向に転じ、十一月一日から第八波に入ったと私も認識しておりまして、引き続き増加傾向にありますが、この週末、金土日を見ますと一週間前よりは減っているので、先々週から私もちょっと申し上げてまいりましたが、先週あたりがピークではないかなという感じはいたしますが、ただ、一方で、入院患者さんはしばらくは減りませんので、これは要警戒ということだと思っております。
そうした中で、県では、国が定めたオミクロン株に対応した新たなレベル分類に合わせて指標の見直しを行いまして、保健医療への負荷が高まった場合への新たな対応を定めました。
また、この冬は季節性インフルエンザとの同時流行が懸念されることから、これまでを上回る発熱患者等の増加に備えるため、特に診療・検査医療機関について箇所数の増加を図るとともに、診療時間の延長やかかりつけ患者以外にも対応を広げていただいております。診療・検査医療機関、発熱患者さんを診ていただく医療機関は、今、愛知県内、大体ざっと約二千二百登録させていただいておりまして、しっかり対応していただいております。
あわせて、個人防護具や設備に要する経費を引き続き支援するなど、発熱患者等に関するさらなる診療能力の向上に取り組んでおります。
さらに、多くの医療機関が休診となる年末年始におきまして、救急外来や休日診療所に発熱患者等が集中せず、安心して受診していただけるように、臨時に開設する医療機関及び薬局に対しまして、独自の財政支援を行うための補正予算をこの議会に提案させていただいたところであります。
今回で三回目の冬を迎えることになりますが、引き続き感染状況を見据え、医療機関や県医師会等関係団体の方々としっかり連携を図りながら、適時的確に対応し、県民の皆様の命と健康を全力で守ってまいります。
次に、土砂災害対策の推進についてであります。
本県では、県民の皆様の命と暮らしを守るため、ハード、ソフト両面から総合的な土砂災害対策に取り組んでおります。
まず、ハード対策としては、人家密集地区や避難場所、迅速な避難が困難な方が利用されている医療・福祉施設などの保全に重点を置き、砂防堰堤等の整備を進めております。
また、災害時に防御機能を確実に発揮させるため、長寿命化計画に基づく砂防施設の点検、修繕を適切に行うとともに、今後は、立木を捕捉する施設を砂防堰堤に追加するなどの機能強化を図ってまいります。
今後も、国の防災・減災、国土強靱化のための五か年加速化対策を活用し、これらの取組を加速してまいります。
次に、ソフト対策といたしましては、身の回りの危険な箇所を知っていただくため、土砂災害警戒区域等の指定を進めております。また、市町村が避難指示を発令する際に、危険が高まっている地区をより的確に判断できるよう、今年度から土砂災害の危険度の判定単位を五キロ四方から一キロ四方に細分化して情報提供しております。
さらに、いざというときの確実な避難につなげるため、避難場所や経路、タイミングを記載するマイ・ハザードマップを住民の皆様に作成していただく取組を二〇一八年度から市町村と共に進めております。来年度からは家族ぐるみで取り組めるよう、小学生向けの作成キットを提供するなど、より一層の普及に努めてまいります。
今後とも、県民の皆様の命と暮らしを何としても守るという強い決意の下、全力で土砂災害対策に取り組んでまいります。
続いて、自動車産業に対する支援についてお答えをいたします。
CASEの進展は、自動車産業のみならず社会全体に大きな変化を生じさせます。こうした大変革に対し、本県では、様々な観点から多面的な施策を展開しているところであります。
まず、直近においては、電動化の加速が中小自動車サプライヤーに大きな影響を及ぼすものと認識をいたしております。そこで、本県の圧倒的なモノづくりの集積という強みを電動化の時代においても生かしていくため、自動車サプライヤーの新製品、新事業への進出をサポートする専門家によるハンズオン支援プログラムを実施しております。
あわせて、電動化分野に進出するためのきっかけの場として、自動車メーカーや大手部品メーカーの協力の下、電動車等の構成部品等を展示、解説するBEV関連部品展示解説イベントを明日まで開催をいたしております。
また、本県自動車産業がカーボンニュートラルやCASEといった潮流に取り残されることなく、さらに新たな価値を創出していくことをサポートしていくことが肝要であります。
そのための環境整備として、水素社会の到来をにらんだ水素ステーションの整備を全国一の規模で推進するとともに、高齢者等の移動手段の確保など、社会課題の解決にも資する自動運転の実証実験等を実施してまいりました。
加えて、自動車産業の国際競争力強化や国内市場活性化の観点から、自動車諸税におけるユーザー負担の一段の軽減と簡素化などの抜本的な見直しを行うよう、九県知事・二政令市長連名の緊急声明を愛知県が取りまとめ、連名自治体や自動車関係団体と共に政府及び与党に対し、先月要請を行いました。
今後も、こうした支援策を総動員して、本県の自動車産業やモノづくりの世界的な競争力をさらに高めてまいります。
続いて、豊かな水産資源を育む海づくりについてであります。
本県では、漁場の生産力の強化や水産資源の増大に向けて、栄養塩環境等の適切な管理や新しい漁場づくり、栽培漁業の強化などを愛知県漁業振興計画の重点施策に位置づけて取り組んでおります。
黒田議員お示しのとおり、窒素やリンといった栄養塩は水産資源の増殖に不可欠なものでありまして、近年はその減少が全国的な課題となっております。
本県でも、栄養塩不足による漁業生産への影響が指摘されていることから、二〇一七年度から五年間、三河湾沿岸二か所の浄化センターにおきまして、秋から冬にかけて放流水中のリンの濃度を増加させる試験運転を行いました。その結果、アサリの身入りやノリの品質によい効果が見られましたが、その範囲が限定的であったことから、本年十一月から二年間、総量規制基準を改定し、窒素とリンをより増加させる社会実験を行っております。その効果については、本年九月に立ち上げた検討会議において検証し、漁業生産に必要な栄養塩管理の在り方を検討してまいります。
また、新しい漁場づくりとして、国土交通省から提供された河川等の砂を活用して干潟、浅場の造成面積を今年度から倍増し、魚介類の生息の場を拡大させるとともに、漁場に石をまく貝類増殖場の造成について、現在行っている三河湾でアサリ資源の回復に効果があったことから、今後は伊勢湾にも広げていくこととしております。
さらに、栽培漁業を強化するため、県栽培漁業センターにおいて、漁業者の要望が強いハマグリなど新たな魚種の生産施設の建設に着手しており、二〇二五年度から生産を開始することといたしております。
今後も、本県水産業が持続的に発展するよう、豊かな水産資源を育む海づくりにしっかりと取り組んでまいります。
続いて、プレ・ステーションAiについてのお尋ねであります。
プレ・ステーションAiでは、専門的な知見を持つ統括マネジャーが常駐し、起業に至るアイデアの具体化や資金調達の手法など、スタートアップの成長段階に応じた起業支援を行っているところであります。
今年度新たにフランスのステーションFの知見を取り入れたプログラムの実施や、リモートメンバー制度の導入などを行い、登録メンバー数は昨年度末の四十八社から百五十五社へと増加しております。
具体的な成果としましては、開設から昨年度までの約二年間で、会社設立に至ったスタートアップが十四社、資金調達の達成が十四社、製品開発が六社、事業会社との協業開始が十一社ありました。
また、今年度は、既に十三社がベンチャーキャピタルなどからの資金調達を達成しているほか、この十月には上場企業に対し、出口戦略の一つであるM&Aによる株式譲渡を実現した事例もありました。いわゆるイグジットということです。
さらに、今年五月に県も出資したステーションAiセントラルジャパン一号ファンドでは、これまでに二社のプレ・ステーションAiメンバーに対する投資を実施しております。
こうした取組によりまして、プレ・ステーションAiでは、メンバーの集積や資金調達環境が整いつつあります。
本県では、これらの成果を踏まえながら、今後はさらにスタートアップにおける人材面の支援や、ユニコーン企業として飛躍的に成長する可能性のあるスタートアップの成長を加速させる取組など、スタートアップが直面する現下の課題にストレートに対応するための施策を強化し、この地域にさらなる人、物、金を集結させ、STATION Aiが二〇二四年十月の開業と同時にロケットスタートを切れるよう、取組の一層の充実を図ってまいります。
次に、アジア競技大会、アジアパラ競技大会を活用した地域活性化についてお答えをいたします。
アジア競技大会は、スポーツの振興を促進するのはもちろんのこと、成長著しいアジアに向けて、本県が持つ魅力や先進的な産業技術を示す絶好の機会であり、国際交流や観光の促進、さらには産業振興につながると考えております。
本県では、こうした大会が持つインパクトを最大限に生かすため、二〇一九年三月にアジア競技大会を活用した地域活性化ビジョンを策定し、取組を着実に進めております。
そうした中で、本年四月にアジアパラ競技大会の開催が決定したことを踏まえ、地域活性化ビジョンの改訂に向けた検討を進めております。
このビジョンでは、全ての人が活躍できる愛知をつくるを新たな目標の一つに掲げたいと考えております。その上で、学識者やパラアスリートなどで構成する有識者会議で示された環境やジェンダー等様々な社会問題の解決への貢献、県全体のユニバーサルデザインのまちづくりの推進といった視点を位置づけるなど、年度末の改訂に向け、検討をさらに深めてまいります。
その上で、本県としましては、今後、パラスポーツの観点も踏まえ、市町村や地元関係団体等と連携し、アジア各国との交流やアスリート育成などの取組を引き続き推進するほか、両大会を活用したメード・イン・愛知のブランド力や観光資源の魅力の発信などを通じて、地域の活性化を進めてまいりたいと考えております。
さらに、共生社会の実現に向けた取組につきましても、地域活性化ビジョンにしっかりと位置づけて、関係者と連携して積極的に推進してまいります。
続いて、中小企業の地球温暖化対策についてであります。
本県内の中小企業の温室効果ガス排出量は、県全体の約四分の一を占めており、カーボンニュートラル社会の実現のためには、中小企業による排出削減が必要不可欠となっております。
加えて、昨今の歴史的な原油・エネルギー価格の高騰から、エネルギー使用量の削減が急務となっており、省エネルギーの推進や再生可能エネルギーの導入が一層求められております。
本県では、こうした課題に直面する中小企業を支援するため、二〇一四年度から専門家が無料で企業訪問等により省エネ対策や温暖化対策のアドバイスを行うあいち省エネ相談を実施しているほか、今年度からカーボンニュートラルを実現するための設備導入に必要な資金を低利で融資する制度を設けております。
さらに、今年の八月以降、県内事業者に対し、再生可能エネルギー設備の導入やエネルギー消費効率の高い設備への更新を支援する補助制度を設け、多くの中小企業に利用いただいております。
こうした中で、現在、グローバル企業を中心に脱炭素化を企業経営に取り込む動きが世界的に進展しており、本県内においても、サプライチェーン全体でカーボンニュートラルを目指す大企業からCO2排出量の削減を求められるサプライヤーもありまして、そうした要請に応えることも中小企業にとって大きな課題となっております。
一方、中小企業の中には、既にCO2削減対策に積極的に取り組み、自社で開発したシステムを他社に提供したり、培ったノウハウを生かして新たにコンサルティングを展開している、そうした意欲的な企業さんもあります。
脱炭素経営に取り組むことは、エネルギーコストの削減だけでなく、企業の社会的評価の向上や資金調達面での優位性の確保、新たなビジネスチャンスの可能性にもつながるものと考えられております。
県としては、脱炭素経営のメリットや成功事例の紹介とともに、排出量の算定や削減目標の設定など、中小企業の脱炭素化に必要な支援を行い、カーボンニュートラル社会の実現につなげてまいります。
次に、健康寿命の延伸についてお答えをいたします。
健康寿命の延伸は全ての県民の願いであり、これを実現するためには、一人一人が健康づくりに取り組むとともに、社会全体で支えることが何よりも重要であります。
本県では、健康日本21あいち新計画に基づき、様々な健康づくりの施策を総合的、計画的に進めております。
中でも、本県独自の取組として、運動や食生活の改善などに取り組んだ方々が県内の協力店で各種優待サービスを受けることができるあいち健康マイレージ事業を実施しているほか、若い世代や働く世代の方々にも気軽に健康づくりに取り組んでいただけるよう、健康づくりを支援するスマートフォンアプリ、あいち健康プラスを開発、運用しております。
また、社会全体で支える効果的な取組といたしまして、栄養バランスを考えた食生活を支援するため、県内の飲食店やコンビニ店等に参加していただける食育推進協力店を通じて、食生活に関するポスターの掲示やリーフレットの配布など、健康に役立つ情報を提供する事業を実施しております。
さらに、健康経営に取り組む企業の登録制度を設け、本県が管理運営しているあいち健康経営ネットで制度の周知や好事例の紹介等を行っております。登録企業は、県独自の中小企業融資制度の活用が可能であり、特に優れた取組を行う企業への表彰などを行っております。
現在、本県では、健康づくりのさらなる推進のため、生活習慣や健康づくりに関する県民調査を行っておりまして、今後はこの結果も参考にして、さらなる効果的な施策を積極的に推進し、全ての県民の皆様が生涯を通じて健康で生き生きと過ごすことができる健康長寿あいちの実現を目指してまいります。
続いて、少子化対策の推進についてであります。
本県では、少子化対策を総合的に推進するため、あいちはぐみんプラン二〇二〇─二〇二四に基づいて、若者の就職から結婚、妊娠、出産、子育てまでのライフステージに応じた切れ目ない支援に取り組んでまいりました。
これまで、保育サービスやワーク・ライフ・バランスの充実等により待機児童は大きく減少し、女性の労働力率の特徴を示す、いわゆるM字カーブも改善するなど、着実に成果を積み重ねてきているところであります。
一方、少子化は予想を上回るスピードで進んでおり、新型コロナウイルス感染症や物価高騰の影響により、現在の生活や将来への不安感が増す中、少子化対策を着実に進めていくためには、子供を安心して産み育て、また、子供を守っていくことのできる環境づくりが何より大切であります。
このため、子育て世代に対する緊急の経済的支援として、県独自に保育所等への給食費助成を行うとともに、児童一人当たり一万円の給付を十一月下旬から順次開始しているところであります。
また、喫緊の課題であるヤングケアラー支援の取組として、三市でモデル事業を実施するとともに、県内小中高生五十四万人に対して、理解促進のためのパンフレットを配布することとしており、現在中間見直しを行っているはぐみんプランにこうした新たな取組を位置づけ、積極的に推進してまいります。
来年四月のこども基本法の施行や、国のこども家庭庁の発足により、社会全体で子供を支え育む機運が一層高まることが期待をされております。今後とも、子供を取り巻く様々な環境変化に的確に対応し、子供を安心して産み育てられる社会づくりを推進してまいります。
次に、インターネット上の誹謗中傷等の防止に向けた取組についてのお尋ねであります。
本県では、インターネット上の誹謗中傷等の防止については、喫緊に取り組むべき重要な人権課題であるとの認識の下、本年四月一日に施行した愛知県人権尊重の社会づくり条例に個別に条項を規定して、様々な施策を推進しております。
今年度は、新型コロナウイルス感染症、部落差別、外国人、障害者に関する差別的な書き込みを対象としたインターネットモニタリング事業を実施し、十月末までに三百五十件の書き込みを把握し、このうち、差別を助長する悪質で違法性の高い十九件について、人権擁護機関である名古屋法務局に削除要請を行っております。
また、本年八月の条例啓発イベントでは、SNSでの誹謗中傷により最愛の娘さんを亡くされ、その後の活動が侮辱罪の厳罰化など刑法の見直しにつながったことでも知られております木村響子さんに御講演いただくとともに、十二月四日から十日までの人権週間に合わせて人権ポスター等を作成し、インターネットの正しい利用について、広く県民の皆様に啓発を行っているところであります。
さらに、県東大手庁舎に設置をいたしましたあいち人権センターに新たに人権相談窓口を設け、インターネット上の誹謗中傷等を受けた被害者に対する支援も行っております。
今後、インターネットモニタリング事業やインターネットの適正な利用に向けた啓発事業をさらに充実させることにより、インターネット上の誹謗中傷等の防止を図るとともに、弁護士相談による被害者支援などに取り組むことで、多様性を認め合う、誰一人取り残されることのない人権尊重の社会づくりを推進してまいります。 私からの最後の答弁になりますが、金利上昇に備えた財政運営についてお答えをいたします。
金利上昇による公債費負担を抑制するためには、県債残高を抑制することが肝要であります。本県では、あいち行革プラン二〇二〇に基づいて、通常の県債の実質的な残高について、二〇一九年度決算の水準を超えることのないよう維持、抑制に努めております。
また、国内金利が上昇傾向にある中、県債の発行に当たっては、市場環境に即した適正な発行条件にできるよう取組を進めております。具体的には、発行時期の平準化や、発行年限・条件決定方式の多様化を行うとともに、発行時期や償還年限等をあらかじめ特定しないフレックス枠を活用するなど、発行の柔軟化を推進しているところであります。
さらに、こうした市場環境の変化に適切に対応していくためには、金融等に関する専門的な知識が必要となります。このため、地域経済の動向や金融情勢の変動に関する情報収集にたけた国など関係機関との連携を図りながら、地域経済分析や金融市場に精通した専門性を有する人材の育成にも取り組んでまいります。
今後も引き続き、県債残高の抑制や安定的な資金調達に取り組み、公債費負担の適正管理に努め、財政運営に支障が生じることのないようにしっかりと進めてまいります。
以上、御答弁申し上げました。
◯警察本部長(鎌田徹郎君)
ゾーン30プラスの推進についての御質問についてお答えいたします。
県警察ではこれまで、生活道路の交通事故抑止対策としてゾーン30を推進してまいりました。このゾーン30は、歩行者等の通行が最優先され、通過交通が可能な限り抑制されるという基本的なコンセプトに対する地域住民の同意が得られる区域におきまして、最高速度を時速三十キロメートルに抑制する区域規制等を講じることで、区域内における車両の速度及び通過交通の抑制を図るものでございます。
ゾーン30プラスでは、このゾーン30に、車両の速度を低下させるなどの効果がある物理的デバイスを適切に組み合わせることとなるため、議員お示しのとおり、より高い交通事故抑止効果が期待されるものと考えております。
ゾーン30プラスの整備に際しましては、道路管理者との連携や地域住民の同意等が不可欠でございますので、関係者間で整備に向けた調整や検討を進めてまいりましたところ、今月中に名古屋市中村区において県内初となるゾーン30プラスを整備する予定となりました。また、今年度中には名古屋市瑞穂区においても、さらに一か所の整備を予定しているところでございます。
ゾーン30プラスは、高齢者や子供だけでなく、地域住民が日常的に利用する生活道路の安全確保を図るものであり、県民の安心・安全に直結する施策であると考えております。
引き続き、道路管理者と緊密に連携の上、地域住民との合意形成を図りながら、ゾーン30プラスの整備を推進してまいります。
以上でございます。
新政あいち県議団政策調査会長の黒田太郎です。
新政あいち県議団を代表して、順次質問をさせていただきます。
初めに、新型コロナウイルス感染症に対応する医療提供体制についてお伺いいたします。
皆さん、新型コロナウイルス感染症について、第一波から第七波までの新規陽性者数の推移を思い浮かべてください。第一波以降、新規陽性者数の山は徐々に高くなり、第七波が最も高い山になったと思います。イメージですけれども、第一波、第二波、第三、第四と来て、五、六、七と、こういった感じではないでしょうか。
私たちは、これまでワクチン接種を繰り返し、マスクを着用し続けましたが、波は高くなっていきました。そして、飲食店に対しては、新型コロナウイルス感染症が蔓延した当初から感染源であると言われ続け、新規陽性者数が増加するたびに営業規制がかけられました。しかし、一番高い第七波においては、営業規制がかけられないまま、大きな波は次第に引いていき、今はまた新しい波が寄せています。
私は、これまでの対応が間違っていたと申し上げるつもりはございません。むしろ、社会が未知の敵と戦うときに、正しいと思われる施策を国主導で講じていくのは当然のことだと思います。しかし、それで終わらせては社会の発展につながりません。これまでの対応や事態を検証し、科学的知見を蓄積して後世に残すことが非常に重要です。
このことは、私たち新政あいち県議団が十月十三日に知事にお渡しした提言書の中で最重点要望事項として取り上げておりますので、この場で改めて申し上げさせていただきます。
さて、このような波を経る中で、本県の医療提供体制については、二〇二〇年二月当初は最大確保病床が七十二床でありましたが、一年後の二〇二一年二月には千二百十五床、第五波の二〇二一年九月には千七百二十二床、そして、二〇二二年八月には二千五百四十床と、感染の拡大状況に応じて整備されてきました。
また、発熱外来である診療・検査医療機関についても拡充されております。しかしながら、本年六月二十一日から始まった第七波では、感染力が非常に強いオミクロン株等により、八月十七日に新規陽性者数が過去最多、一万八千九百八十五人となるなど、これまでにない規模で感染が拡大し、医療現場では、発熱患者が診療・検査医療機関に集中し、医療体制が逼迫する状況となりました。
そのため、オミクロン株の特性である重症化率が低く、軽症となる場合が多いことを踏まえ、幅広い医療機関でコロナ患者を診ることが必要になると考えます。
そこでお伺いします。
この冬には、新型コロナウイルス感染症の再拡大や季節性インフルエンザの同時流行など、第七波を上回る感染拡大が生じると懸念されていますが、県としては、患者の受入れができなくなるなどの医療機関の逼迫を防ぐため、どのように取り組んでいかれるのか、知事の御所見をお伺いいたします。
次に、安全・安心の確保についてであります。
まず、土砂災害対策の推進についてお伺いします。
近年、全国各地で様々な自然災害が発生しています。二〇一八年の西日本豪雨では、広島県をはじめとして三十二の道府県で約二千六百件の土砂災害が発生し、百十九名もの貴い命が失われ、平成以降最大の被害となりました。
今年も十月末時点で、全国で七百五十八件の土砂災害が発生し、二名の犠牲者が出るなど、多くの被害が発生しております。
今年九月に発生した台風十五号においては、お隣の静岡県では、線状降水帯による大雨で百六十三件の土砂災害が発生し、一名の方が亡くなり、三十五の家屋が被害を受けました。また、流木が取水口を塞ぐことによる約七万戸の断水や、鉄塔施設の倒壊による約十二万戸の停電が生じるなど、人命や暮らしに多大な影響が出たことは記憶に新しいところであります。
このように土砂災害の状況を見聞きしたとき、大規模災害はもとより、一たび台風が近海を通過しただけでも大きな被害が生じることもあり、土砂災害対策をしっかりと進める必要があると考えます。
国土交通省によりますと、長野県岡谷市の小田井沢川では、二〇〇六年七月に土石流により七名の方が亡くなられるなどして、これらの被害を受け、四基の砂防堰堤整備がされました。この地区では、二〇二一年八月に再び土石流が発生しましたが、整備した砂防堰堤が土石流を受け止め、被害を防いだとのことです。改めて土砂災害防止施設の必要性を感じたところであります。
また、広島県広島市では、二〇二一年八月に西日本豪雨と同規模の大雨により土砂災害が発生したにもかかわらず、事前に住民が避難して人的被害を免れた事例が多く報告されております。このように被害を軽減するためには、防災意識の向上を図っていくことも大切ではないかと考えております。
今年九月の台風十五号では、本県でも初めてとなる顕著な大雨に関する情報が発表され、線状降水帯による大雨が発生しました。幸い本県では犠牲者は出ておりませんが、大規模な土砂災害はいつ起こってもおかしくない状況にあります。
そこでお伺いします。
人命を保護し、土砂災害による被害を最小限に食い止めるため、県ではどのような取組を進めていかれるのか、知事の御所見をお伺いいたします。
次に、交通事故防止対策の推進についてお伺いします。
昨日現在の交通事故死者数は百二十五人で、前年に比べプラス十八人と大幅に増加しており、全国順位は大阪府に次いでワースト二位と極めて憂慮すべき状況となっています。
本年の交通死亡事故の特徴を見ますと、十月末現在で、当事者別では歩行者の死者が四十五人と、前年同時期に比べプラス十六人と大きく増加しており、年齢別では高齢者の死者の割合が全体の四割以上を占め、依然として他の年齢層よりも高く、また、幼い子供が犠牲になる死亡事故も発生しています。
悲惨な交通事故をなくしていくためには、こうした交通弱者の保護が重要であり、特に地域住民の生活に密着し、通学路に指定される例も多い生活道路においては、歩行者が安全に通行できる環境の整備が必要となります。
この点について、第十一次愛知県交通安全計画には、生活道路等における人優先の安全・安心な歩行空間の整備が盛り込まれており、幹線道路へ自動車交通を転換させることによる徹底した通過交通の排除や、車両速度の抑制等のゾーン対策に取り組み、高齢者、障害者、子供などが安心して通行できる道路空間の確保を図ると記載されております。
これまで生活道路の安全対策として、警察は、歩行者等の安全な通行を確保するため、最高速度三十キロの区域規制等を実施するゾーン30を推進し、昨年度末現在で二百六十二か所に整備をしたと伺っております。
ちなみに、なぜ三十キロなのかというと、自動車が歩行者と衝突したときの速度が三十キロを超えると歩行者の致死率が急上昇するからであり、三十キロは生死を分ける境界線とも考えられます。
一方、道路管理者は、生活道路における対策として、道路上に膨らみを設けるハンプや、道路の幅をラバーポールなどで狭くする狭さくといった物理的デバイスの設置等を推進することにより、通過車両の速度やエリア内への進入の抑制を図ってきたものと承知しております。
現在進めているゾーン30プラスは、生活道路において、警察の行う最高速度三十キロの区域規制と、道路管理者の行う物理的デバイスを適切に組み合わせることで大きな相乗効果が期待されます。
ゾーン30プラスが整備されていけば、より多くの悲惨な交通事故が防止でき、まさに命を守る施策になると思われますが、残念ながら本年十一月末までに愛知県内での導入事例はないと承知しています。
そこでお伺いします。
ゾーン30プラスを今後どのように進めていかれるのか、警察本部長の御所見をお伺いします。
次に、持続的な本県産業の振興についてであります。
まず、自動車産業に対する支援についてお伺いします。
自動車産業は、製造品出荷額等が約六十兆円と全製造業の一八・六%を占め、また、関連産業も含めると就業人口が約五百五十万人に上るなど、言うまでもなく我が国の産業、経済を牽引しています。特に本県の自動車産業は、製造品出荷額ベースで全国四二・六%のシェアを占めており、我が国の成長エンジンとしての役割を果たしてきました。
一方で、自動車産業を取り巻く環境は、CASE、MaaSの進展やカーボンニュートラルの高まりにより、百年に一度の大変革期を迎えています。
我が国でも、二〇二〇年十二月に出された二〇五〇年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略の中で、二〇三五年までに乗用車新車販売でハイブリッドを含む電動車一〇〇%を実現することが明記されました。
さらに今後、人を運転から解放する自動運転、インターネットとつながるコネクテッド化、所有から使用に変わるシェアリング化が進展するにつれて、自動車産業に構造変化をもたらすだけではなく、生活、社会をも大きく変えると予想されます。
こうした変化は、新たな価値を創出し、環境や高齢化、労働力不足といった社会課題の解決につなげる新たなビジネスの好機であり、こうしたチャンスを捉え、イノベーションを興していくことが必要です。
CASEのうち、自動運転の実現に向けては世界中で様々な取組が行われています。自動車関連企業のみならず、IT企業も加わり、その開発にしのぎを削っている状況にあります。
本県においても、自動運転の社会実装を目指し、全国に先駆けた実証実験が進められているところです。今後はこうした取組を推し進め、より利便性が高く、安全・安心な自動運転の社会実装の在り方についても検討を進めていく必要があります。
一方で、既存の自動車部品製造企業にとっては、事業戦略の見直しが必要となることも想定されます。電動化が進み、動力がエンジンからモーターに替わると、部品点数は約三万点から一万点ほど減少すると言われています。自動車産業が従来の車から次世代自動車に進化を遂げる機会を捉えて、自動車関連企業は、自社の強みを深化させることに加え、新たな価値を生む事業を探索していく必要があると考えます。
そこでお伺いします。
自動車産業が激動の時代を迎える中、自動車メーカーやサプライヤーに対して総合的、多面的な支援が必要と考えますが、今後どのように取り組んでいかれるのか、知事の御所見をお伺いいたします。
次に、豊かな水産資源を育む海づくりについてお伺いします。
伊勢湾、三河湾は、木曽川、矢作川、豊川などの大河川からの豊かな栄養により多くの生物が育まれ、さらに、干潟や浅場が発達して魚の産卵や成育の場となっていることから、古くから豊かな漁場として多種多様で豊富な海の恵みをもたらしてきました。
現在でも、アサリやガザミ、シラスなどは全国有数の産地で、ノリの養殖も盛んに行われています。特にアサリは、十八年連続で全国一位の生産量を誇っております。
しかし、アサリの生産量は、二〇一四年以降年々減少しており、最盛期の約二万トンから二〇二一年にはその一割程度にまで減少しています。また、ノリの養殖では、近年の栄養不足による色落ちなどが影響して、二〇二一年の収穫量は八千トンと五年前の約六割となっています。
漁業者からは、最近、海が痩せてきており、アサリが育たない、シャコやアナゴが獲れなくなったなどの声が出ていると聞いております。
近年では、伊勢湾、三河湾の水質改善を図る取組により、陸から海に流入する窒素やリンの量が減少したため、海ではプランクトンの発生に必要な栄養が不足し、魚介類が成長するのに必要な餌が少なくなるなど、生物を育む力、いわゆる漁場の生産力が低下していると指摘されています。
また、沿岸域の開発に伴う埋立てにより、多くの魚介類の生息場となる干潟や浅場がなくなってしまったことも魚介類が減少した原因と言われています。
今後、本県水産業が持続的に発展していくために、また、県民の皆様に豊かな海の恵みを届けていくためには、漁場の生産力の強化や水産資源の増大を図ることが極めて重要な課題であると考えます。
県では、これらの課題に加え、就業者の高齢化や担い手不足など、水産業を取り巻く様々な厳しい状況に対処するため、昨年三月に豊かな水産資源を育む海づくり、漁業者が儲かる経営体づくり、未来につながる水産業の構造改革の三つを柱とした愛知県漁業振興計画を策定し、様々な施策に取り組んでいます。中でも、豊かな水産資源を育む海づくりは、漁業生産者を支える根幹的な取組と考えます。
そこでお伺いします。
漁場生産力の強化や水産資源の増大への対応など、豊かな水産資源を育む海づくりについて、今後どのように取り組んでいかれるのか、知事の御所見をお伺いいたします。
次に、さらなる愛知の発展についてであります。
まず、プレ・ステーションAiについてお伺いいたします。
現在、ソフトバンク株式会社の一〇〇%子会社であるSTATION Ai株式会社が中心となり、二〇二四年十月の供用開始に向けて、スタートアップの創出、育成、展開を図るための拠点施設となるSTATION Aiの整備が進められています。
私は、大きな期待を込めてこの事業を見詰めています。なぜならば、STATION Aiから誕生する企業の中から、日本経済、場合によっては世界経済の新しい流れをつくる企業が生まれる予感がするからです。
遡れば、トヨタ自動車株式会社もパナソニック株式会社も創業当時は小規模事業者でした。これは、GAFAMと呼ばれる米国IT企業の雄であっても同じことではないでしょうか。
創業者が志を立て、世の中のニーズを酌み取って企業を大きくすることは、納税、雇用創出、新規サービスの提供などの面で社会に大きく貢献することになりますから、そうした企業が早く、数多く生まれるように議会人としても最大限応援したいと思います。
このように、STATION Aiが注目される中ではありますが、私は、県が名古屋駅に程近いささしまライブのWeWorkグローバルゲート名古屋内で先行的に実施しているプレ・ステーションAiにも注目しています。
プレ・ステーションAi統括マネジャーを務める篠原氏は、かつては起業家であり、現在はエンジェル投資家として活躍しており、成功も失敗も、国内も海外も、様々な経験をされておられます。その篠原氏がプレ・ステーションAiにいらっしゃるのであれば、これは相当面白い施設になるだろう、そのように思いました。
私は、高校生、大学生、若手社会人を連れて、篠原氏に会いにプレ・ステーションAiに行きました。施設を見渡すと、明るい空間の中で、夢と現実のはざまにもがく起業志望家が多数おり、彼らが先に起業を果たした方の話を食い入るように聞く姿もありました。何かが起きそうな熱気を感じることができたのです。プレ・ステーションAiに起業家を志す若者たちが集まり、彼らがそこで切磋琢磨し、大きく成長、飛躍していける、そのような場を提供する役割をプレ・ステーションAiが果たすことが非常に重要であると思います。
また、この地域から起業家を生み育てることも大切ですが、一方で、彼らを支える投資家の存在も重要ではないかと思います。
スタートアップは、創業の初期段階における資金力が脆弱であり、外部からの投資資金を必要とします。せっかく起業家を多く生み出しても、資金面での支援が不十分であれば、スタートアップは成長することができません。
民間の調査によれば、二〇二一年の国内スタートアップの資金調達額は七千八百一億円と言われておりますが、このうち東京都が六千五百三十一億円で八三・七%を占めており、愛知県は三十八億円、約〇・五%にとどまっております。
起業家と投資家は車の両輪のような関係にあります。間もなく一兆円市場に迫るとも言われるスタートアップの資金調達市場において、この愛知でも、起業家と投資家がバランスよく存在するスタートアップ・エコシステムの形成が必要ではないでしょうか。
そこでお伺いします。
スタートアップの成長や資金調達など、プレ・ステーションAiではこれまでにどのような成果が得られたのか、また、その成果をSTATION Aiにどうつなげていかれるのか、知事の御所見をお伺いいたします。
次に、アジア競技大会、アジアパラ競技大会を活用した地域活性化についてお伺いいたします。
二〇二六年に愛知・名古屋でアジア最大のスポーツの祭典である第二十回アジア競技大会が開催されます。現在、大会コンセプトであるアスリートファーストの視点を踏まえながら、簡素で質素、機能的で合理的な大会を目指して、組織委員会を中心に、競技や選手村、輸送、宿泊などの大会運営について鋭意取り組んでいると思います。
一方、県では、この大会を単なるスポーツ大会の開催にとどめることなく、地域の活性化につなげていくため、二〇一九年三月にアジア競技大会を活用した地域活性化ビジョンを策定しております。
本ビジョンでは、スポーツ・健康、観光・文化、地域経済・産業、人材育成・国際貢献の各分野において、大会を契機として目指す姿や取組を示しており、既にあいちトップアスリートアカデミーやアジア間交流フレンドシップ、ボランティア人材の育成等の取組を推進していると承知しております。
その中でも、あいちトップアスリートアカデミーにおいては、アーチェリー競技のユースアカデミー生が県高校新人大会で二位入賞の上、全国高校選抜大会に出場するなど、既に実績を上げているものもございます。
そのような中、本年四月には第五回アジアパラ競技大会の愛知・名古屋での開催が決定したことを受け、現在、本ビジョンの改訂に取り組んでいると伺っております。
アジアパラ競技大会は、四年に一度開催されるアジア最大の障害者スポーツの祭典であり、アジアのパラアスリートが集う夢の舞台です。この大会を愛知・名古屋で開催することは、障害への理解や障害のある方の社会参加の促進に寄与するとともに、障害者スポーツを応援する方々の交流の促進につながることが大いに期待されます。
このようなまたとない機会を生かし、ビジョンにしっかりと方向性を位置づけることにより、多様性を尊重し合う共生社会の実現に向けて、本県が日本、さらにはアジアをリードしていくことが重要であると考えております。
そこでお伺いします。
本ビジョンの改訂を進める中で、両大会を活用した地域活性化の推進に向けて、県として今後どのように取り組んでいかれるのか、知事の御所見をお伺いいたします。
次に、カーボンニュートラル社会の実現に関し、中小企業の地球温暖化対策についてお伺いいたします。
脱炭素社会の実現に向けた社会的機運が高まっていますが、本県は産業県であるがゆえに温室効果ガスの排出量が全国最多レベルであり、このうち約六割強を占める産業・業務部門の削減対策が課題となっています。
大企業では脱炭素経営への取組が広がっており、また、多くの大企業は、二〇五〇年のカーボンニュートラルを見据えた二〇三〇年度の具体的な排出量の削減目標を策定しており、自身の事業活動からの温室効果ガス排出量の把握や、その削減に向けての設備投資、研究開発等に取り組んでいるところです。
さらに、近年、サプライチェーン全体でカーボンニュートラルを目指す大企業が増加しており、一部の大企業では、サプライチェーンの一端を担う中小企業に対しても、排出量の削減目標の設定や具体的な取組を求めています。
二〇二一年七月に商工中金が実施した中小企業のカーボンニュートラルに関する意識調査によると、カーボンニュートラルの進展が経営に好影響または悪影響を与えると回答した企業は全体の七一%と何らかの影響を感じている企業が多いものの、具体的な方策を実施または検討していると回答した企業は二〇%にとどまっています。
多くの中小企業は、脱炭素に向けた急激な社会情勢の変化に戸惑っており、温室効果ガス削減に向けた具体的な対策に着手できていないということになり、このことに私は強い危機感を抱きます。
中小企業の多くは財政基盤が必ずしも盤石ではなく、情報や知識、そして人材面での制約もあります。また、省エネ設備の導入などの初期コストの高い対策は取りにくいのも現状です。
SDGsの考え方が社会に浸透していく中で、SDGs未来都市である本県は、誰一人取り残さない社会の実現を目指しています。カーボンニュートラルの大きな潮流に直面する中小企業の現実に寄り添った支援がぜひとも必要であると考えます。
そこでお伺いいたします。
地球温暖化対策を着実に進め、一刻も早くカーボンニュートラルを実現するために、本県産業の屋台骨を支える中小企業への支援についてどのように考えておられるのか、知事の御所見をお伺いします。
次に、誰もが活躍できる社会の実現についてであります。
まず、健康寿命の延伸についてお伺いいたします。
皆さんは、一ドルの投資に対して三ドルのリターンという言葉を聞いたことがあるでしょうか。これは、アメリカのジョンソン・エンド・ジョンソンが世界でグループ二百五十社約十一万四千人に健康教育プログラムを提供して、そのプログラムに基づく投資とリターンを表したものです。お聞き及びの方も多いかと思います。
ここでいう投資とは、健康や医療に関わるスタッフ、事務スタッフに必要な人件費、診療施設やフィットネスルームなどに必要な設備費です。では、リターンは何かというと、欠勤率の低下や勤労意欲の向上などからくる生産性の向上、企業が負担する医療コストの削減、企業イメージの向上や、それに伴う就職人気ランキングの上昇などが挙げられます。
これだけはっきりした結果が出ているなら、企業はこうしたプログラムを取り入れ、いわゆる健康経営を実践すべきと考えますし、経営者の実践に何らかの障害があるのであれば、それを取り除いて後押しすべく、行政が手を差し伸べるべきと考えます。
また、個人に目を向けると、健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間、いわゆる健康寿命が長くなることがその人の幸せにつながると考えられます。さらに、そうした個人が増えて、社会全体として平均寿命と健康寿命の差が縮まれば、税や社会保険料負担の軽減を通じて社会全体の幸せにもつながると考えられます。
いかにして健康寿命を延ばすかについては、様々な手法や考え方がありますが、一般社団法人日本セルフケア推進協議会では、セルフケア、すなわち健康に関する関心、正しい理解、予防、健康づくりが重要であると提唱しています。
同協議会が本年四月に厚生労働省に提出した要望書には、予防、健康づくりの費用負担軽減やインセンティブを税制や予算措置で対応する新たな大原則を確立いただくこととあり、医療や介護とは異なり、公的保険が適用されない予防、健康づくりへの行政からの支援も求めています。
今後も少子・高齢化が進むと予測される中では、高齢者を支える現役世代の数がますます減少し、現役世代の負担増加に伴い、子供を産み育てる意欲の減退につながることで、少子・高齢化に拍車がかかるといった悪循環に陥る可能性があります。
そこでお伺いいたします。
この悪循環を絶つ一つの手段として、個人、法人に対する健康づくりの推進施策が重要になると考えますが、どのように取り組まれるのか、知事の御所見をお伺いします。
次に、少子化対策の推進についてお伺いいたします。
我が国では、これまで、子供に関する様々な施策の充実に取り組んできましたが、少子化の進行、人口減少に歯止めがかかっていません。また、児童虐待相談件数や不登校児童生徒数が過去最多になるなど、子供を取り巻く状況は深刻であり、コロナによる環境変化がそうした状況に拍車をかけていないかと大変心配しております。
こうした中、国においては、常に子供の最善の利益を第一に考え、子供に関する取組、政策を我が国社会の真ん中に据えて、子供の健やかな成長を社会全体で後押しするため、来年四月にこども家庭庁を設置し、これまで内閣府、厚生労働省、文部科学省等がそれぞれ担ってきた子供に関する施策を一体的に実施することとなりました。
あわせて、従来、それぞれの法律に基づいて、国の関係省庁や地方自治体で進められてきた子供に関する取組の基盤となる基本理念などを明らかにし、子供施策を社会全体で総合的かつ強力に実施するための包括的な基本法として、こども基本法が施行されます。
本県の少子化の現状を見ますと、二〇二一年の合計特殊出生率は一・四一であり、全国平均の一・三〇を〇・一一ポイント上回り、全国順位は二十三位となっています。大都市を抱える都道府県の中では比較的高いものの、安定的に人口を維持できると言われている二・〇七を大きく下回っており、少子化傾向は続いております。
このまま少子化が進行すると、生産年齢人口の減少と高齢化を通じて、労働供給の減少、将来の経済や市場規模の縮小、現役世代の負担の増加など、社会経済に多大な影響を及ぼすことが懸念されます。
少子化の要因は多岐にわたるため、対策も幅広い視点から総合的に対応すべきであり、共働き世帯、片働き世帯など全ての世帯を対象に、結婚、妊娠、出産、子育て、子供の自立といった全てのライフステージにわたる支援が重要であります。
子供は地域社会の宝です。子供を取り巻く環境が大きく変わる中、改めて少子化という県民共通の課題に真正面から立ち向かう時期に来ていると考えます。
そこでお伺いします。
本県では、これまで少子化対策にどのように取り組んでこられたのか、また、今後どのように取り組んでいかれるのか、知事の御所見をお伺いいたします。
次に、愛知県人権尊重の社会づくり条例に基づくインターネット上の誹謗中傷等の防止に向けた取組についてお伺いします。
インターネットの普及に伴い、多くの人がその恩恵にあずかっているところですが、その一方で、発信者の匿名性、情報発信の簡易性といった特性を悪用した個人に対する誹謗中傷や差別を助長する表現が書き込まれているなど、インターネット上では人権に関わる問題が数多く発生しています。
インターネット上の書き込みにより誹謗中傷などの被害にあった場合は、国の人権擁護機関である法務省の人権相談窓口や、総務省の違法・有害情報相談センターなどの機関に相談することが可能となっていますが、本年三月に法務省が公表した令和三年における人権侵犯事件の状況によると、新規に救済手続を開始したインターネット上の人権侵犯事件の数は、二〇二一年が千七百三十六件と、二〇一七年の二千二百十七件をピークに、ここ数年、高水準で推移しています。
こうした状況を踏まえ、国においては、インターネット上の誹謗中傷などによる権利侵害について、より円滑に被害者救済を図るため、特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律、いわゆるプロバイダ責任制限法を昨年改正し、本年十月一日から施行いたしました。これにより、これまで発信者を特定するために二回の裁判手続を経ることが一般的だったところ、一回の手続で行うことが可能となりました。
また、インターネット上の誹謗中傷を抑止するためには、悪質な侮辱行為に対して厳正に対処することが必要であるとして、これまで侮辱罪の法定刑が、三十日間の拘留、一万円未満の科料であったところ、本年七月から、一年以下の懲役、禁固、三十万円の罰金に厳罰化されたところです。
このように、国において、インターネット上の誹謗中傷を防止するための法整備が進む中、本県では、今年度、愛知県人権尊重の社会づくり条例が施行され、その中で、インターネット上の誹謗中傷等の未然防止及び被害者支援が規定されました。
条例では、インターネット上の誹謗中傷等を未然に防止するために必要な教育、啓発その他の施策や、被害者の支援を図るために必要な施策を講ずることとされておりますが、こうした取組を着実に推進していくことにより、条例が実効性のあるものになることを期待しております。
そこでお伺いいたします。
インターネット上の誹謗中傷等を防止し、被害者を支援するため、現在どのような取組を行っているのか、また、今後どのように取り組んでいかれるのか、知事の御所見をお伺いいたします。
結びに、金利上昇に備えた財政運営についてお伺いいたします。
アメリカ連邦準備制度理事会は、今年に入り、六会合連続で利上げを行い、政策金利の誘導目標を下限三・七五%から上限四%にすることを決定しました。これは、二〇〇八年一月以来の高水準となっています。
ヨーロッパに目を転じると、欧州中央銀行でも今年に入って三回、幅でいうと計二%の政策金利引上げを行っています。
一方、日本はどうでしょうか。日本銀行の黒田総裁は、十月のG20において各国に対し、現状の大規模な金融緩和を継続すると説明したようですが、欧米との金利差が開くことで円は売られ、ドルやユーロが買われ、円安が進行しています。
ちなみに、昨年末の外国為替相場を見ると、一ドル百十五円程度でした。これがその後、円安方向へ大きく変動し、十月二十日には東京外国為替市場で一時百五十円台となり、一九九〇年八月以来約三十二年ぶりの安値をつけました。
その後、十二月二日時点では一ドル百三十四円台となりましたが、これほどまでに急激に円安が進むと、輸入物価の上昇が無視できなくなります。十月値上げという言葉が盛んに言われましたが、私たちは今、日用品や食料品、光熱費などの値段が徐々に上がってきていることを生活の中で実感しています。
ちなみに、日本の消費者物価指数を見てみると、十月は前年同月比三・六%の上昇となっており、上昇幅は月を追うごとに拡大基調となっています。
それでは、輸入品全体の物価上昇を主因とした国内物価の上昇が生じているからといって、金融当局がすぐに利上げに踏み切るかといえば、疑問符がついています。国内景気に力強さがない中での利上げには相当悩むであろうと想像されるからです。
さりとて、現状の物価上昇をいつまでも放置できるかといえばそうもいかないことから、いつかは難しい決断を迫られる時期が来るかもしれません。
本県の本年度当初予算における一般会計の県債発行総額は二千八百六十億円、全会計では約五千億円となっております。仮に金利が上昇すれば、県の財政運営に少なからず影響が生じるものと考えられます。
このため、たとえ杞憂に終わったとしても、金利の上昇を危機管理上の問題と捉え、日頃から財政運営を進めていくことが重要ではないでしょうか。
もちろん、このことは愛知県に限らず国全体の問題でもありますので、県は、国の財政当局、金融当局と連携して、金融経済の機微に対して感度を高めていくことも必要であると考えます。
そこでお伺いします。
金利上昇に備え、県としてどのように財政運営に取り組まれるのか、知事の御所見をお伺いします。
以上、新政あいち県議団を代表して県政各般にわたる様々な課題についてお尋ねいたしました。真摯な御答弁をお願い申し上げまして、壇上からの質問を終わります。御清聴ありがとうございました。(拍手)
〔知事大村秀章君登壇〕
◯知事(大村秀章君)
それでは、新政あいち県議団の黒田太郎政策調査会長の質問にお答えをいたします。
初めに、新型コロナウイルス感染症に対応する医療提供体制についてお答えをいたします。
感染者が大幅に増加した場合においても、十分に対応できる医療提供体制を確保することは大変重要であると認識をいたしております。
現在の新規陽性者数は、十月中旬より増加傾向に転じ、十一月一日から第八波に入ったと私も認識しておりまして、引き続き増加傾向にありますが、この週末、金土日を見ますと一週間前よりは減っているので、先々週から私もちょっと申し上げてまいりましたが、先週あたりがピークではないかなという感じはいたしますが、ただ、一方で、入院患者さんはしばらくは減りませんので、これは要警戒ということだと思っております。
そうした中で、県では、国が定めたオミクロン株に対応した新たなレベル分類に合わせて指標の見直しを行いまして、保健医療への負荷が高まった場合への新たな対応を定めました。
また、この冬は季節性インフルエンザとの同時流行が懸念されることから、これまでを上回る発熱患者等の増加に備えるため、特に診療・検査医療機関について箇所数の増加を図るとともに、診療時間の延長やかかりつけ患者以外にも対応を広げていただいております。診療・検査医療機関、発熱患者さんを診ていただく医療機関は、今、愛知県内、大体ざっと約二千二百登録させていただいておりまして、しっかり対応していただいております。
あわせて、個人防護具や設備に要する経費を引き続き支援するなど、発熱患者等に関するさらなる診療能力の向上に取り組んでおります。
さらに、多くの医療機関が休診となる年末年始におきまして、救急外来や休日診療所に発熱患者等が集中せず、安心して受診していただけるように、臨時に開設する医療機関及び薬局に対しまして、独自の財政支援を行うための補正予算をこの議会に提案させていただいたところであります。
今回で三回目の冬を迎えることになりますが、引き続き感染状況を見据え、医療機関や県医師会等関係団体の方々としっかり連携を図りながら、適時的確に対応し、県民の皆様の命と健康を全力で守ってまいります。
次に、土砂災害対策の推進についてであります。
本県では、県民の皆様の命と暮らしを守るため、ハード、ソフト両面から総合的な土砂災害対策に取り組んでおります。
まず、ハード対策としては、人家密集地区や避難場所、迅速な避難が困難な方が利用されている医療・福祉施設などの保全に重点を置き、砂防堰堤等の整備を進めております。
また、災害時に防御機能を確実に発揮させるため、長寿命化計画に基づく砂防施設の点検、修繕を適切に行うとともに、今後は、立木を捕捉する施設を砂防堰堤に追加するなどの機能強化を図ってまいります。
今後も、国の防災・減災、国土強靱化のための五か年加速化対策を活用し、これらの取組を加速してまいります。
次に、ソフト対策といたしましては、身の回りの危険な箇所を知っていただくため、土砂災害警戒区域等の指定を進めております。また、市町村が避難指示を発令する際に、危険が高まっている地区をより的確に判断できるよう、今年度から土砂災害の危険度の判定単位を五キロ四方から一キロ四方に細分化して情報提供しております。
さらに、いざというときの確実な避難につなげるため、避難場所や経路、タイミングを記載するマイ・ハザードマップを住民の皆様に作成していただく取組を二〇一八年度から市町村と共に進めております。来年度からは家族ぐるみで取り組めるよう、小学生向けの作成キットを提供するなど、より一層の普及に努めてまいります。
今後とも、県民の皆様の命と暮らしを何としても守るという強い決意の下、全力で土砂災害対策に取り組んでまいります。
続いて、自動車産業に対する支援についてお答えをいたします。
CASEの進展は、自動車産業のみならず社会全体に大きな変化を生じさせます。こうした大変革に対し、本県では、様々な観点から多面的な施策を展開しているところであります。
まず、直近においては、電動化の加速が中小自動車サプライヤーに大きな影響を及ぼすものと認識をいたしております。そこで、本県の圧倒的なモノづくりの集積という強みを電動化の時代においても生かしていくため、自動車サプライヤーの新製品、新事業への進出をサポートする専門家によるハンズオン支援プログラムを実施しております。
あわせて、電動化分野に進出するためのきっかけの場として、自動車メーカーや大手部品メーカーの協力の下、電動車等の構成部品等を展示、解説するBEV関連部品展示解説イベントを明日まで開催をいたしております。
また、本県自動車産業がカーボンニュートラルやCASEといった潮流に取り残されることなく、さらに新たな価値を創出していくことをサポートしていくことが肝要であります。
そのための環境整備として、水素社会の到来をにらんだ水素ステーションの整備を全国一の規模で推進するとともに、高齢者等の移動手段の確保など、社会課題の解決にも資する自動運転の実証実験等を実施してまいりました。
加えて、自動車産業の国際競争力強化や国内市場活性化の観点から、自動車諸税におけるユーザー負担の一段の軽減と簡素化などの抜本的な見直しを行うよう、九県知事・二政令市長連名の緊急声明を愛知県が取りまとめ、連名自治体や自動車関係団体と共に政府及び与党に対し、先月要請を行いました。
今後も、こうした支援策を総動員して、本県の自動車産業やモノづくりの世界的な競争力をさらに高めてまいります。
続いて、豊かな水産資源を育む海づくりについてであります。
本県では、漁場の生産力の強化や水産資源の増大に向けて、栄養塩環境等の適切な管理や新しい漁場づくり、栽培漁業の強化などを愛知県漁業振興計画の重点施策に位置づけて取り組んでおります。
黒田議員お示しのとおり、窒素やリンといった栄養塩は水産資源の増殖に不可欠なものでありまして、近年はその減少が全国的な課題となっております。
本県でも、栄養塩不足による漁業生産への影響が指摘されていることから、二〇一七年度から五年間、三河湾沿岸二か所の浄化センターにおきまして、秋から冬にかけて放流水中のリンの濃度を増加させる試験運転を行いました。その結果、アサリの身入りやノリの品質によい効果が見られましたが、その範囲が限定的であったことから、本年十一月から二年間、総量規制基準を改定し、窒素とリンをより増加させる社会実験を行っております。その効果については、本年九月に立ち上げた検討会議において検証し、漁業生産に必要な栄養塩管理の在り方を検討してまいります。
また、新しい漁場づくりとして、国土交通省から提供された河川等の砂を活用して干潟、浅場の造成面積を今年度から倍増し、魚介類の生息の場を拡大させるとともに、漁場に石をまく貝類増殖場の造成について、現在行っている三河湾でアサリ資源の回復に効果があったことから、今後は伊勢湾にも広げていくこととしております。
さらに、栽培漁業を強化するため、県栽培漁業センターにおいて、漁業者の要望が強いハマグリなど新たな魚種の生産施設の建設に着手しており、二〇二五年度から生産を開始することといたしております。
今後も、本県水産業が持続的に発展するよう、豊かな水産資源を育む海づくりにしっかりと取り組んでまいります。
続いて、プレ・ステーションAiについてのお尋ねであります。
プレ・ステーションAiでは、専門的な知見を持つ統括マネジャーが常駐し、起業に至るアイデアの具体化や資金調達の手法など、スタートアップの成長段階に応じた起業支援を行っているところであります。
今年度新たにフランスのステーションFの知見を取り入れたプログラムの実施や、リモートメンバー制度の導入などを行い、登録メンバー数は昨年度末の四十八社から百五十五社へと増加しております。
具体的な成果としましては、開設から昨年度までの約二年間で、会社設立に至ったスタートアップが十四社、資金調達の達成が十四社、製品開発が六社、事業会社との協業開始が十一社ありました。
また、今年度は、既に十三社がベンチャーキャピタルなどからの資金調達を達成しているほか、この十月には上場企業に対し、出口戦略の一つであるM&Aによる株式譲渡を実現した事例もありました。いわゆるイグジットということです。
さらに、今年五月に県も出資したステーションAiセントラルジャパン一号ファンドでは、これまでに二社のプレ・ステーションAiメンバーに対する投資を実施しております。
こうした取組によりまして、プレ・ステーションAiでは、メンバーの集積や資金調達環境が整いつつあります。
本県では、これらの成果を踏まえながら、今後はさらにスタートアップにおける人材面の支援や、ユニコーン企業として飛躍的に成長する可能性のあるスタートアップの成長を加速させる取組など、スタートアップが直面する現下の課題にストレートに対応するための施策を強化し、この地域にさらなる人、物、金を集結させ、STATION Aiが二〇二四年十月の開業と同時にロケットスタートを切れるよう、取組の一層の充実を図ってまいります。
次に、アジア競技大会、アジアパラ競技大会を活用した地域活性化についてお答えをいたします。
アジア競技大会は、スポーツの振興を促進するのはもちろんのこと、成長著しいアジアに向けて、本県が持つ魅力や先進的な産業技術を示す絶好の機会であり、国際交流や観光の促進、さらには産業振興につながると考えております。
本県では、こうした大会が持つインパクトを最大限に生かすため、二〇一九年三月にアジア競技大会を活用した地域活性化ビジョンを策定し、取組を着実に進めております。
そうした中で、本年四月にアジアパラ競技大会の開催が決定したことを踏まえ、地域活性化ビジョンの改訂に向けた検討を進めております。
このビジョンでは、全ての人が活躍できる愛知をつくるを新たな目標の一つに掲げたいと考えております。その上で、学識者やパラアスリートなどで構成する有識者会議で示された環境やジェンダー等様々な社会問題の解決への貢献、県全体のユニバーサルデザインのまちづくりの推進といった視点を位置づけるなど、年度末の改訂に向け、検討をさらに深めてまいります。
その上で、本県としましては、今後、パラスポーツの観点も踏まえ、市町村や地元関係団体等と連携し、アジア各国との交流やアスリート育成などの取組を引き続き推進するほか、両大会を活用したメード・イン・愛知のブランド力や観光資源の魅力の発信などを通じて、地域の活性化を進めてまいりたいと考えております。
さらに、共生社会の実現に向けた取組につきましても、地域活性化ビジョンにしっかりと位置づけて、関係者と連携して積極的に推進してまいります。
続いて、中小企業の地球温暖化対策についてであります。
本県内の中小企業の温室効果ガス排出量は、県全体の約四分の一を占めており、カーボンニュートラル社会の実現のためには、中小企業による排出削減が必要不可欠となっております。
加えて、昨今の歴史的な原油・エネルギー価格の高騰から、エネルギー使用量の削減が急務となっており、省エネルギーの推進や再生可能エネルギーの導入が一層求められております。
本県では、こうした課題に直面する中小企業を支援するため、二〇一四年度から専門家が無料で企業訪問等により省エネ対策や温暖化対策のアドバイスを行うあいち省エネ相談を実施しているほか、今年度からカーボンニュートラルを実現するための設備導入に必要な資金を低利で融資する制度を設けております。
さらに、今年の八月以降、県内事業者に対し、再生可能エネルギー設備の導入やエネルギー消費効率の高い設備への更新を支援する補助制度を設け、多くの中小企業に利用いただいております。
こうした中で、現在、グローバル企業を中心に脱炭素化を企業経営に取り込む動きが世界的に進展しており、本県内においても、サプライチェーン全体でカーボンニュートラルを目指す大企業からCO2排出量の削減を求められるサプライヤーもありまして、そうした要請に応えることも中小企業にとって大きな課題となっております。
一方、中小企業の中には、既にCO2削減対策に積極的に取り組み、自社で開発したシステムを他社に提供したり、培ったノウハウを生かして新たにコンサルティングを展開している、そうした意欲的な企業さんもあります。
脱炭素経営に取り組むことは、エネルギーコストの削減だけでなく、企業の社会的評価の向上や資金調達面での優位性の確保、新たなビジネスチャンスの可能性にもつながるものと考えられております。
県としては、脱炭素経営のメリットや成功事例の紹介とともに、排出量の算定や削減目標の設定など、中小企業の脱炭素化に必要な支援を行い、カーボンニュートラル社会の実現につなげてまいります。
次に、健康寿命の延伸についてお答えをいたします。
健康寿命の延伸は全ての県民の願いであり、これを実現するためには、一人一人が健康づくりに取り組むとともに、社会全体で支えることが何よりも重要であります。
本県では、健康日本21あいち新計画に基づき、様々な健康づくりの施策を総合的、計画的に進めております。
中でも、本県独自の取組として、運動や食生活の改善などに取り組んだ方々が県内の協力店で各種優待サービスを受けることができるあいち健康マイレージ事業を実施しているほか、若い世代や働く世代の方々にも気軽に健康づくりに取り組んでいただけるよう、健康づくりを支援するスマートフォンアプリ、あいち健康プラスを開発、運用しております。
また、社会全体で支える効果的な取組といたしまして、栄養バランスを考えた食生活を支援するため、県内の飲食店やコンビニ店等に参加していただける食育推進協力店を通じて、食生活に関するポスターの掲示やリーフレットの配布など、健康に役立つ情報を提供する事業を実施しております。
さらに、健康経営に取り組む企業の登録制度を設け、本県が管理運営しているあいち健康経営ネットで制度の周知や好事例の紹介等を行っております。登録企業は、県独自の中小企業融資制度の活用が可能であり、特に優れた取組を行う企業への表彰などを行っております。
現在、本県では、健康づくりのさらなる推進のため、生活習慣や健康づくりに関する県民調査を行っておりまして、今後はこの結果も参考にして、さらなる効果的な施策を積極的に推進し、全ての県民の皆様が生涯を通じて健康で生き生きと過ごすことができる健康長寿あいちの実現を目指してまいります。
続いて、少子化対策の推進についてであります。
本県では、少子化対策を総合的に推進するため、あいちはぐみんプラン二〇二〇─二〇二四に基づいて、若者の就職から結婚、妊娠、出産、子育てまでのライフステージに応じた切れ目ない支援に取り組んでまいりました。
これまで、保育サービスやワーク・ライフ・バランスの充実等により待機児童は大きく減少し、女性の労働力率の特徴を示す、いわゆるM字カーブも改善するなど、着実に成果を積み重ねてきているところであります。
一方、少子化は予想を上回るスピードで進んでおり、新型コロナウイルス感染症や物価高騰の影響により、現在の生活や将来への不安感が増す中、少子化対策を着実に進めていくためには、子供を安心して産み育て、また、子供を守っていくことのできる環境づくりが何より大切であります。
このため、子育て世代に対する緊急の経済的支援として、県独自に保育所等への給食費助成を行うとともに、児童一人当たり一万円の給付を十一月下旬から順次開始しているところであります。
また、喫緊の課題であるヤングケアラー支援の取組として、三市でモデル事業を実施するとともに、県内小中高生五十四万人に対して、理解促進のためのパンフレットを配布することとしており、現在中間見直しを行っているはぐみんプランにこうした新たな取組を位置づけ、積極的に推進してまいります。
来年四月のこども基本法の施行や、国のこども家庭庁の発足により、社会全体で子供を支え育む機運が一層高まることが期待をされております。今後とも、子供を取り巻く様々な環境変化に的確に対応し、子供を安心して産み育てられる社会づくりを推進してまいります。
次に、インターネット上の誹謗中傷等の防止に向けた取組についてのお尋ねであります。
本県では、インターネット上の誹謗中傷等の防止については、喫緊に取り組むべき重要な人権課題であるとの認識の下、本年四月一日に施行した愛知県人権尊重の社会づくり条例に個別に条項を規定して、様々な施策を推進しております。
今年度は、新型コロナウイルス感染症、部落差別、外国人、障害者に関する差別的な書き込みを対象としたインターネットモニタリング事業を実施し、十月末までに三百五十件の書き込みを把握し、このうち、差別を助長する悪質で違法性の高い十九件について、人権擁護機関である名古屋法務局に削除要請を行っております。
また、本年八月の条例啓発イベントでは、SNSでの誹謗中傷により最愛の娘さんを亡くされ、その後の活動が侮辱罪の厳罰化など刑法の見直しにつながったことでも知られております木村響子さんに御講演いただくとともに、十二月四日から十日までの人権週間に合わせて人権ポスター等を作成し、インターネットの正しい利用について、広く県民の皆様に啓発を行っているところであります。
さらに、県東大手庁舎に設置をいたしましたあいち人権センターに新たに人権相談窓口を設け、インターネット上の誹謗中傷等を受けた被害者に対する支援も行っております。
今後、インターネットモニタリング事業やインターネットの適正な利用に向けた啓発事業をさらに充実させることにより、インターネット上の誹謗中傷等の防止を図るとともに、弁護士相談による被害者支援などに取り組むことで、多様性を認め合う、誰一人取り残されることのない人権尊重の社会づくりを推進してまいります。 私からの最後の答弁になりますが、金利上昇に備えた財政運営についてお答えをいたします。
金利上昇による公債費負担を抑制するためには、県債残高を抑制することが肝要であります。本県では、あいち行革プラン二〇二〇に基づいて、通常の県債の実質的な残高について、二〇一九年度決算の水準を超えることのないよう維持、抑制に努めております。
また、国内金利が上昇傾向にある中、県債の発行に当たっては、市場環境に即した適正な発行条件にできるよう取組を進めております。具体的には、発行時期の平準化や、発行年限・条件決定方式の多様化を行うとともに、発行時期や償還年限等をあらかじめ特定しないフレックス枠を活用するなど、発行の柔軟化を推進しているところであります。
さらに、こうした市場環境の変化に適切に対応していくためには、金融等に関する専門的な知識が必要となります。このため、地域経済の動向や金融情勢の変動に関する情報収集にたけた国など関係機関との連携を図りながら、地域経済分析や金融市場に精通した専門性を有する人材の育成にも取り組んでまいります。
今後も引き続き、県債残高の抑制や安定的な資金調達に取り組み、公債費負担の適正管理に努め、財政運営に支障が生じることのないようにしっかりと進めてまいります。
以上、御答弁申し上げました。
◯警察本部長(鎌田徹郎君)
ゾーン30プラスの推進についての御質問についてお答えいたします。
県警察ではこれまで、生活道路の交通事故抑止対策としてゾーン30を推進してまいりました。このゾーン30は、歩行者等の通行が最優先され、通過交通が可能な限り抑制されるという基本的なコンセプトに対する地域住民の同意が得られる区域におきまして、最高速度を時速三十キロメートルに抑制する区域規制等を講じることで、区域内における車両の速度及び通過交通の抑制を図るものでございます。
ゾーン30プラスでは、このゾーン30に、車両の速度を低下させるなどの効果がある物理的デバイスを適切に組み合わせることとなるため、議員お示しのとおり、より高い交通事故抑止効果が期待されるものと考えております。
ゾーン30プラスの整備に際しましては、道路管理者との連携や地域住民の同意等が不可欠でございますので、関係者間で整備に向けた調整や検討を進めてまいりましたところ、今月中に名古屋市中村区において県内初となるゾーン30プラスを整備する予定となりました。また、今年度中には名古屋市瑞穂区においても、さらに一か所の整備を予定しているところでございます。
ゾーン30プラスは、高齢者や子供だけでなく、地域住民が日常的に利用する生活道路の安全確保を図るものであり、県民の安心・安全に直結する施策であると考えております。
引き続き、道路管理者と緊密に連携の上、地域住民との合意形成を図りながら、ゾーン30プラスの整備を推進してまいります。
以上でございます。